・・・ という声がやがてあちらからもこちらからも起こって、しまいには一人が石をなげますと一人はかわらをぶつける。とうとう一かたまりのわかい者がなわとはしごを持って来てなわを王子の頸にかけるとみんなで寄ってたかってえいえい引っぱったものですから・・・ 有島武郎 「燕と王子」
跡のはげたる入長持 聟入、取なんかの時に小石をぶつけるのはずいぶんらんぼうな事である。どうしたわけでこんな事をするかと云うと是はりんきの始めである。人がよい事があるとわきから腹を立てたりするのも世の中の人心・・・ 著:井原西鶴 訳:宮本百合子 「元禄時代小説第一巻「本朝二十不孝」ぬきほ(言文一致訳)」
・・・といって、おとなしくしているボンを棒でなぐったり、また、ものをぶつけるまねなどをして追うのです。「おばさん、犬はなにもしないんですよ。」と、三郎はじめ他の子供がいいましても、その子供の母親は耳に入れません。なんでも犬を悪いことに・・・ 小川未明 「少年の日の悲哀」
・・・自分の拳固で殴った位では自然が巧妙に大切にこしらえてくれた頭はこわれないからと云って、壁へ向ってその頭をぶつけっこして、よりつよくぶつけるのが偉いように誇る人間もいると云えば、人々はその愚かさを笑うであろう。それは目に見える愚劣さだからであ・・・ 宮本百合子 「今日の生活と文化の問題」
・・・男性への爆弾というとき、我々若きジェネレーションは、女から女独特の爆発力を加えて装填した爆弾を男に只ぶつけるのではなくて、男にそれを確かと受とめさせ、とって直して、男と女との踵に重い今日の社会的羈絆から諸共に解放されようとする、その役に立て・・・ 宮本百合子 「昨今の話題を」
出典:青空文庫