三月十五日は三・一五の記念日だから共産党の公判を傍聴に行こうとお友達○○○さんに誘われました。わたしはこれまで新聞で公判のことをときどき読んでいましたが、どうもよく本当の様子が分りませんでした。正直に云うとこわいもの見たさ・・・ 宮本百合子 「共産党公判を傍聴して」
・・・は、婦人が政治に関する演説を傍聴することさえ感じた。女学校令というものが出来て、女子教育の普及を計ると云われたのは一八九九年のことであるが、その次の年政府は治安警察法第五条で女子の政治運動を禁止した。 日本の地平線をちらりと掠めた民主主・・・ 宮本百合子 「現実に立って」
・・・そして近代国家としての日本は、軽工業の労働の裡に青春を消耗しつくす貧困、無智な婦人の労力を土台にして、第一次欧州大戦迄膨張をつづけて来たのであった。 第一次大戦終了の後、漸々新婦人協会が治安警察法第五条の改正を議会に請願し、世界の社会情・・・ 宮本百合子 「現実に立って」
・・・ モラトリアムで学生の学費一五〇円と制限されたが、この食糧難、住宅難、まして交通費の膨脹で、学生は帳面一冊買いにくいこととなった。文化の最も大切な資材である紙は決してやすくなっていない。印刷費は却って上って来ている。憲法草案第二十一条に・・・ 宮本百合子 「現実の必要」
・・・したがって、こんにちフロイドの精神分析をうけつぐ人があるならば、そのひとは、第二次大戦後、性コンプレックスは、その複合体のうちにどれほど多量の経済、政治上の要因をふくんで膨脹して来たか、を見ずにいないであろう。そして、その人も、おそらくは、・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・この公判には組合の人々も都合して一人でも多く傍聴する必要があります。検事が不当な取調べをしたと云う事は公判第一日から五回迄の陳述の中に、ハッキリ述べられています。林弁護人の陳述の中では検事団が三鷹事件の証人を検事側に有利に利用する為には偽証・・・ 宮本百合子 「今年こそは」
・・・日露戦争からヨーロッパ大戦までの間に、近代社会としての日本の社会機構が急速な膨脹をとげたように、その発展の雰囲気は、文学にも及ぼして、有産知識人の文学的活動は華々しく行われたのであった。その当時、果して文学賞などというものが存在したであろう・・・ 宮本百合子 「今日の文学と文学賞」
・・・と云う小さい境を蹴破って一層膨張した我ではございますまいか。その境で、人はもう、小さい「俺」や「私」やにはなやまされては居ません。けれども、天神の眼を透す、総ての現象は、天地を蓋う我から洩れる事はございません。地を這う蟻の喜悦から、星の壊る・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・ 日本で大正頃から出版企業が膨脹したにつれて、文学・小説の創作水準に分裂がおこった。一方には、日本の全人口からみれば少い一部の文学好きの人々、教養の深い人々のために、純文学作品の発表・出版があり、一方では、より多くの大衆が、労働から解放・・・ 宮本百合子 「商売は道によってかしこし」
・・・等を生んだ菊池寛は、その作家としての特色の必然な発展と大戦後の経済界の膨脹につれて近代化したジャーナリズムの吸引によって、久米正雄と共に既に大衆文学へ移っている。さりとて上記の作家達が『文芸戦線』の文学運動に身を挺するには、その文学理論が納・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
出典:青空文庫