・・・ そして、風と雪と、ぼさぼさの灰のような雲のなかで、ほんとうに日は暮れ雪は夜じゅう降って降って降ったのです。やっと夜明けに近いころ、雪婆んごはも一度、南から北へまっすぐに馳せながら云いました。「さあ、もうそろそろやすんでいいよ。あた・・・ 宮沢賢治 「水仙月の四日」
・・・柳には、乾いた藻のような寄生木が、ぼさぼさ一杯ぶら下っている。沼気の籠った、むっとする暑苦しさ。日光まで、際限なく単調なミシシッピイの秋には飽き果てたように、萎え疲れて澱んでいる。とある、壊れた木柵の陰から男が一人出て来た。 彼の皮膚は・・・ 宮本百合子 「翔び去る印象」
・・・ 五月二十日 雨もよいの湿っぽい午後 五時前 曇天の下に目の前の新緑はぼさぼさと見えた。 大工の働いている新築の工事場で 全体の光景がいつもより手近に見え しめりをふくんで/しめっぽく 新しい木の匂い、おがく・・・ 宮本百合子 「窓からの風景(六月――)」
出典:青空文庫