・・・危険と目指れた数十名の志士論客は三日の間に帝都を去るべく厳命された。明治の酷吏伝の第一頁を飾るべき時の警視総監三島通庸は遺憾なく鉄腕を発揮して蟻の這う隙間もないまでに厳戒し、帝都の志士論客を小犬を追払うように一掃した。その時最も痛快なる芝居・・・ 内田魯庵 「四十年前」
・・・ところで、今日そのような大生産のできる資本を持った雑誌は、数えるほどしかなく、それらの雑誌社は売れ口を数でこなすために、もっとも文化水準の低い広汎なおくれた層を目指し、支配階級がその商売を援助するように内容を飽くまでも、支配する側にとって良・・・ 宮本百合子 「今日の文化の諸問題」
・・・「何ものかを目指しながら進んでいる」と自身思い、その内容として「個人にその元来の豊富性を回復させ」「今日、文学、文化、文明を発展させ、開花させることの出来る」文化建設のための闘争への自身の生命を結合させていると信じながら、ジイドは、実際に当・・・ 宮本百合子 「ジイドとそのソヴェト旅行記」
・・・が、どうぞ、私が窮極に於て何を目指して居るのか、何の為に毎日、此命を保って居るのか、それ丈は、判って貰いたい。母と自分との関係など、難しい、辛いものは少なかろう。 彼女は、彼女自身の悦び希望を以て、私を、小さい時から、芸術的傾向に進ませ・・・ 宮本百合子 「二つの家を繋ぐ回想」
出典:青空文庫