・・・戸石君に聞き合せると更にはっきりするのであるが、戸石君も已に立派な兵隊さんになっていて、こないだも、「三田さんの事は野営地で知り、何とも言えない気持でした。桔梗と女郎花の一面に咲いている原で一しお淋しく思いました。あまり三田さんらしい死・・・ 太宰治 「散華」
・・・兵隊が行軍している途中からこの歌の魂がピーターパンの幽霊のような姿に移って横にけし飛んだと思うと、やがて流浪の民の夜営のたき火のかたわらにかなでられるヴァイオリンの弦のしらべに変わる。この音の流れて行く末にシャトーのバルコニーが現われて夢見・・・ 寺田寅彦 「音楽的映画としての「ラヴ・ミ・トゥナイト」」
・・・後者のままごと式の野営生活もたしかに愉快でもありまたいろいろな意味で有益ではあろうが、しかし、前者の体験する三昧の境地はおそらく王侯といえども味わう機会の少ないものであって、ただ人類の知恵のために重い責任を負うて無我な真剣な努力に精進する人・・・ 寺田寅彦 「小浅間」
・・・ あとからあとからそのようにしてつくられるピオニイルらは、どこへ組織的にはつけられるのか、どんな分隊、野営をチャーリーが知っているのか、読者にはわからずに、はなはだ不安である。「本」をよますと「正確な理解力」を示すというが、それはどんな・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・ モスロカフは、それより前、夏期の野営を組織し、そこでロカフの作家たちが軍事知識の吸収と文学活動をやるようにした。 レンバルトロカフも五月に入るとロカフ主催の軍事講習会を催した。十四回の講義で、「軍事問題におけるマルクス・レーニン主・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ 夏、共産少年少女の野営地を訪問すると、赤い旗が翻る愉快な日かげで、男の子女の子とりまぜの炊事当番が、ジャガ薯の皮むきをやっている光景によくぶつかる。 学年が進むと、級の日常生活は男女生徒の衛生委員、経済委員、学務委員、社会活動委員・・・ 宮本百合子 「砂遊場からの同志」
・・・ ピオニェール分隊が、景色のいい田舎や海べに野営地をもっていて、ピオニェールたちは、無料で、一ヵ月ぐらい、楽しくそこで暮すのだ。 モスクワと云えば、ソヴェト同盟の首府で、世界の革命を題にし、みんな自分たちの考えだけで遊びをやりとげる・・・ 宮本百合子 「ソヴェトのピオニェールはなにして遊ぶか」
・・・ 区の林間学校とピオニェールの夏の野営というものが、ちゃんと子供のために手をひろげて待っている。 親の給料の額によって、有料、無料。とり扱いは全く同一だ。五六十人から五六百人までの男の子、女の子、プロレタリアート闘士の交代者たちが、・・・ 宮本百合子 「ソヴェト労働者の夏休み」
・・・ 工場クラブの文盲撲滅学校でやっと二年前に字を書くことを覚えた四十五歳の織物女工が、代表に選ばれてピオニェールの野営見学に出かけ、その報告を工場新聞に書くほど、飛躍的に一般婦人勤労者の文化水準は高まったのだ。が、過去の枷あとは、そう急に・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
出典:青空文庫