・・・主として、用語の上に、この作者の微妙な内部的の複雑さが現れている。たとえば、作者は、「花」を「お花」といい「空」を「お空」といっている。何故「お」という敬語的な冠が空にいるのであろうか。空は空として芸術的にまったく美しい。そして、科学的の正・・・ 宮本百合子 「子供のために書く母たち」
・・・皮肉さで、いただかせていただくという、恐らく特殊な用語例の一つが使われているだけだ。そのような卑屈な念の入った言葉づかいを強制されるとしたら、それが既に精神的問題の何ものかであろうと私は感じた。真柄さんは獄中の事実を書く時、生来の陽気性と親・・・ 宮本百合子 「是は現実的な感想」
・・・ 日本文化を守る会が結成されたこと、このように広汎な全日本にわたって男女学生の自主的文化学問への要求が表明されていること、また各方面に日本の軍国主義とファシズムの再燃にたいしてたたかい、平和の擁護のために働こうとする人々のグループが結成・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・ これまで云いもしなかった社会部面について書くと、作家ABCは消滅して、啓蒙パンフレット屋がかく通りの用語、表現で作家が書きはじめるということは、過渡期のあらわれとしても、現代文学の明日への真実な成長のために、考えさせるところが少くない・・・ 宮本百合子 「今日の文学の諸相」
・・・反ファシズム団体が政治的に結合したばかりでなく、文化を擁護するためにフランスの思想家、作家が反ファシスト行動委員会を組織した。この委員長はパリの自然博物館長であった。この委員会は学界の代表者を包括して八千名を超した。 これまで社会問題を・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・だが、それらの用語は天から降る金の箭のように扱われ、古代・中世・近世日本の文学におけるそれらの基準の概括の背景と内容は説き明されない。かかる日本文学古典上の評価の規準の推移に関するまとまったものとしては寡聞にして僅に久松潜一氏の『日本文学評・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・けれども、社会悪は金銭的形態利害擁護の姿でだけ素朴にあらわれるものではないのである。忌憚なく云えば、石原氏がナチとソ連の科学政策をその現実の本質につき入って比較する力を欠いておられる事実なども、社会悪が最も複雑微妙な作用としてあらわれて来て・・・ 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
・・・然しながら、妻が、泥酔した夫や花柳病にかかっている夫との性的交渉を拒絶すべき母として当然の権利を、擁護してはいないのである。性別は染色体の問題であることを私達は知っている。染色体はそれを包蔵する細胞の健康状態と勿論結びついた関係にある。互に・・・ 宮本百合子 「昨今の話題を」
・・・その実際は、六・三制の混乱と、最近全国の専門・大学男女学生が教育防衛復興闘争の一環として立ち上りはじめた学問の自由と独立擁護および授業料ねあげ反対の大運動にもあらわれている。 学生のこういう意志表示を学生の本分にもとるという意見がある。・・・ 宮本百合子 「三年たった今日」
・・・が、力の欠乏を装飾する用語になるべきではございません。人類の愛に対する不真実を、哲学的偽瞞で被うのは卑屈でございます。 私は、現今、米国の女性の生活を非常な勢力で支配して居る此の傾向を打破って、真実な意味に於ての常套打破を期待して居るの・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
出典:青空文庫