・・・の中にも現われまたこの百物語の数々の化け物の中から特に選び出される光栄をもったような化け物どもが、どういう種類の化け物であって、そのいかなる点がこの人にアッピールしたか、またそれがどういう点で過去数千年の日本民族の精神生活と密接につながって・・・ 寺田寅彦 「小泉八雲秘稿画本「妖魔詩話」」
・・・情感へのアッピールの調子から理性への説得にうつった。 この時期の評論が、どのように当時の世界革命文学の理論の段階を反映し、日本の独自な潰走の情熱とたたかっているかということについての研究は、極めて精密にされる必要がある。そして、当時のプ・・・ 宮本百合子 「巖の花」
・・・反民主的な演説の筋書きを与えられ、おくれた日本の、ものの考えかたにアッピールした婦人代議士は、今日自身の存在のために、そのようにして自身を立たしめた保守の力に向き直って闘う必要に迫られているのである。 今回選ばれた婦人代議士たちの質がど・・・ 宮本百合子 「一票の教訓」
・・・と、明治四十年代に、桑田熊蔵工学博士が議会でアッピールして満場水をうったようになった、と記録されているのをみても分る。また細井和喜蔵の「女工哀史」は日本の悲劇的記録である。第一次ヨーロッパ大戦後に出来た国際連盟の世界労働問題の専門部では、日・・・ 宮本百合子 「衣服と婦人の生活」
・・・これは、吉村隊の惨虐を筆頭として、それに類する数々の軍国主義教育の荒々しさ、殺戮性への抗議として読者の心にアッピールした。平気でバサリとやる馘首も、惨澹たる生存威嚇であるという事実にまで思い及んで。―― ところが、四月号の『中央公論』に・・・ 宮本百合子 「鬼畜の言葉」
・・・これらの文学者は、それぞれ日本と世界平和とすべての民族の独立のためのアッピールに署名しているし、ふさわしいと考えられる団体に加わってもいる。けれども、文学者として、創作されつつある文学的成果が、同じひとの社会的行為としての平和運動への参加な・・・ 宮本百合子 「現代文学の広場」
・・・軍時に、ソヴェト軍隊と、交戦中の敵国住民大衆にアッピールするものと仮定したパンフレット、それにはクラブ用の小脚本、レヴュー台本、プラカート用の詩、スローガンなどを盛りこんだパンフレットの発行である。 軍事状態の中にあって各自の文学的政治・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・したがって、それらの人々の文学上の流派が――新感覚派にしろ、新心理主義にしろ、当時に何かアッピールするものがあったために、商業ジャーナリズムの上に流通するようになるとともに、同人雑誌の中に自然の生存競争が生じ、数名の「老舗」と、歴史の波間に・・・ 宮本百合子 「しかし昔にはかえらない」
・・・そして二十数名の文学者は、日本の思想と言論の自由のためにアッピールした。数十年間大学の仏文科教授であった辰野博士がその人たちの笑いをくすぐるためには曾我廼家五郎が必要だと云っている、その日本の二十代の生活と文学の現実は、このようなものである・・・ 宮本百合子 「「下じき」の問題」
・・・ 自分たちの国からこしらえてやるものとしての情愛が、試写会に来ているあらゆる人々の胸底にめざまされてゆくような、そういう感情へのアッピールは、挨拶の言葉の中からも作品の世界からも迸って来なかった。 或るドイツの人が、「日本の女性」を・・・ 宮本百合子 「実感への求め」
出典:青空文庫