・・・自分は覚えず心にインド! 印度だ、と叫んだ。インドでも、裸で裸足の人民の上に、やはり飛行機がとんでいる。人民の無権利の上に、こうやって飛行機だけはとんでいるのだ。革命的な労働者、農民、朝鮮、台湾人にとって、飛行機は何をやったか? 猶も高・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・綿花を栽培し、織物工場で働く耳輪だけ大きい痩せたインド人の後に、ヘルメット帽をかぶり、鼻眼鏡を光らしたイギリス人がいた。 ソヴェトの子供は、幼稚園で、或は小学校で、自然界と人間社会との関係を、日常のあらゆるいきた労作の中から直接学びとる・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・民族は互に関係しあい、入りまじりあって発展して来るのであって、日本のような狭い土地の上でさえも、海という自由な広い道を通って、人類的にはアイヌ、ツングウス、インド支那、漢人、ネグリート、インドネシアなどがまじりあった民族が今日日本人として栄・・・ 宮本百合子 「今日の文化の諸問題」
・・・中国は中国の人々自身の物語をかたりはじめた。インドも、朝鮮も、インド・シナも。アジアは、現代史のなかで、はっきり一つ地球の東側に生存している人類の文学として自身をなりたたせる可能を示しはじめた。 日本は、アジアの憲兵であると云われて来た・・・ 宮本百合子 「「下じき」の問題」
・・・ ――それは支那やインドのことで、今の日本のことではありません。 質問はつづいた。 小学校は共学か? 女は男の大学や専門学校へ入れるか? 農村の女の生活状態――労働はどんなか? 日本の農村の主な生産はなにか? 日・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・ある者は大和絵と文人画と御舟と龍子との混合酒を造ってその味の新しきを誇り、ある者はインドとシナの混合酒に大和絵の香味をつけてその珍奇を目立たせようとする。昔の和歌に巧妙な古歌の引用をもって賞讃を博したものがあるが、この種の絵もそういう技巧上・・・ 和辻哲郎 「院展日本画所感」
・・・彼の眼界は、日本、シナ、インドの全体にわたり、仏教哲学、程朱の学、日本の古典などにすべて通じている。著書も多く、当時の学問の集大成の観がある。したがって思想傾向も、一切を取り入れて統一しようという無傾向の傾向であって、好くいえば総合的、悪く・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
・・・先生がインドにおいてどういうふうに独立を鼓吹したか、あるいは美術院の画家たちにどういうふうに霊感を与えたか、さらにまた五浦の漁師たちをどういうふうに煽動して新式の網を作らせたか。それらのことについては自分は何も知らない。しかし先生が最もよき・・・ 和辻哲郎 「岡倉先生の思い出」
・・・蓮の花そのものの形や感触に何かインド的なもの、日本の国土をはるかに超えたものが感ぜられたからであろう。日本人にとっては、そのことが特に現実を超えた理想を象徴するのに役立ったであろう。しかし同時にそれは顕著にインド的なものであって、インドを超・・・ 和辻哲郎 「巨椋池の蓮」
・・・そのころは中インドの方でもグプタ朝の最盛期で、カリダーサなどが出ており、シナから法顕を引き寄せたほどであった。だからそのインド文化を背景に持つインド・アフガニスタンの塑像美術が、カラコルムを超えてカシュガルヤルカンドホタンあたりへ盛んに入り・・・ 和辻哲郎 「麦積山塑像の示唆するもの」
出典:青空文庫