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・・・一週間すぎて、ふたたびブルウル氏の時間が来た。お互いにまだ友人になりきれずにいる新入生たちは、教室のおのおのの机に坐ってブルウル氏を待ちつつ、敵意に燃える瞳を煙草のけむりのかげからひそかに投げつけ合った。寒そうに細い肩をすぼませて教室へはい・・・
太宰治
「猿面冠者」
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・・・科学者パストウルの生き方がわれわれを感動させるのは、彼が科学者として人類の幸福に情熱的に直接に結びついて行った、その姿である。現実の人間の苦痛と不幸に面して、パストウルは科学者としての要求から着実に次から次へと害悪を及ぼす細菌との具体的な、・・・
宮本百合子
「ヒューマニズムへの道」