・・・しからばこれはセミティク系の言葉かと思っているとまたたとえばスキートの説によればギリシアの euseinはインドゲルマンの理論上の語根 eus とつながり、アングロサクソンの Yslanの源であり、サンスクリットの語根 Ushともつながると・・・ 寺田寅彦 「火山の名について」
・・・近ごろ見かけた珍しいものの一つとしてはサンスクリットで孔雀という意味の言葉を入り口の頭上の色ガラス窓にデワナガリー文字で現わしたのさえあった。ダミアンティやシャクンタラのような妖姫がサーヴするかと思わせるのもおもしろい。 こういうものの・・・ 寺田寅彦 「カメラをさげて」
・・・少なくとも高等数学となると一般世人にはあまり用のないこと、あたかもサンスクリットやヘブライのようなものである。用がないから習わない、習わないからたいそうむつかしく恐ろしく近づき難いもののように思われ、従ってそれに熟達した人がたいそうえらいも・・・ 寺田寅彦 「数学と語学」
・・・読めぬ人にはアッシリア文は飛白の模様と同じであり、サンスクリット文は牧場の垣根と別に変わったことはないのと一般である。しかし「地図の言葉」に習熟した人にとっては、一枚の図葉は実にありとあらゆる有用な知識の宝庫であり、もっとも忠実な助言者であ・・・ 寺田寅彦 「地図をながめて」
・・・但し最後に前論士は釈尊の終りに受けられた供養が豚肉であるという、何という間違いであるか豚肉ではない蕈の一種である。サンスクリットの両音相類似する所から軽卒にもあのような誤りを見たのである。茲に於てか私は前論士の結論を以て前論士に酬える。仏教・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・しかしこれまで特別にそう云う方面の研究をしていたのでないから、秀麿は一歩一歩非常な困難に撞著して、どうしてもこれはサンスクリットをまるで知らないでは、正確な判断は下されないと考えて、急に高楠博士の所へ駈け附けて、梵語研究の手ほどきをして貰っ・・・ 森鴎外 「かのように」
出典:青空文庫