・・・ アーチになった祭壇のすぐ下には、スナイダーを楽長とするオーケストラバンドが、半円陣を採り、その左には唱歌隊の席がありました。唱歌隊の中にはカナダのグロッコも居たそうですが、どの人かわかりませんでした。 ところが祭壇の下オーケストラ・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
前十七等官 レオーノ・キュースト誌宮沢賢治 訳述 そのころわたくしは、モリーオ市の博物局に勤めて居りました。 十八等官でしたから役所のなかでも、ずうっと下の方でしたし俸給もほんのわずかでしたが、受持ち・・・ 宮沢賢治 「ポラーノの広場」
・・・五〇名 第七工場 直流、交流発電キ 電キ機関車 五〇〇 第五工場 小型モーター セン風機 家庭器具 四五〇 第十一工場 製図、営繕十二工場が最も戦闘的であって、ストのトップを切る。田清、時代、そしきが・・・ 宮本百合子 「工場労働者の生活について」
・・・バクストは、それに、衣裳をかくのだ。 *今日は 何と云う日だ自分が詩を書き、一つ二つ 詩を書きまだあきたらず 三つ四つ詩を書く。――妻と云う位置、仕事という繋制皆自分から とけ去って・・・ 宮本百合子 「五月の空」
・・・印象批評と放談のうちに、ジャーナリズムと読者とに対するある種のデモンストレーションが行われ、批評は個々人の印象批評にとどまった。よかれ、あしかれ、日本の民主主義文学の運動にふれたり、それをまともに論議したりすることは、語り手自身のファッショ・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
○手帖、 その間から新聞の切抜 カスト ダアカストするそのキカイとカストとを二つながら製造する目ろみ、○「まだ関西にもこれはないそうですから いろいろ研究しているんです、しらんぷりして。」○・・・ 宮本百合子 「SISIDO」
・・・十二時頃 tea Room でポタージュをたべ トウストをたべる。ヴィンナ、トウストマダムという女 朱 赤と薄クリームの肩ぬき的な洋装、小柄二十四五位 夕方五時すぎ。電車道のところを見るとさほどでもないが濠の側を見ると、・・・ 宮本百合子 「情景(秋)」
・・・国鉄当局は九日―十一日の国電ストの損害賠償として組合あいてに二千万円の支払いを提訴した。これは、ルイスなどに対して使われたが、これまでの日本にはなかった新しい権力行使の方法である。 七月五日になって、夕方のラジオは意外なニュースをつたえ・・・ 宮本百合子 「「推理小説」」
・・・倅の手紙にある宗教と云うのはクリスト教で、神と云うのはクリスト教の神である。そんな物は自分とは全く没交渉である。自分の家には昔から菩提所に定まっている寺があった。それを維新の時、先代が殆ど縁を切ったようにして、家の葬祭を神官に任せてしまった・・・ 森鴎外 「かのように」
・・・個所などを除く時、トルストイの芸術観に適合する作物となるそうである。現代徳育の理想もまた八犬士の境地である。この理想はよい。よいには相違ないがこの理想によって「虚栄を根本より覆せ」と叫ぶものは過激だとお叱りを蒙る。「不徳の人間を社会より放逐・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫