・・・ 燕のたくさん住んでいるのはエジプトのナイルという世界中でいちばん大きな川の岸です――おかあ様に地図を見せておもらいなさい――そこはしじゅう暖かでよいのですけれども、燕も時々はあきるとみえて群れを作ってひっこしをします。ある時その群れの・・・ 有島武郎 「燕と王子」
・・・ホワイトナイルの岸べに生まれたある黒んぼ少年の数奇な冒険生涯を物語る続きものの映画を中学校の某先生が黄色い声で説明したものである。それからずっと後の事ではあるが日清戦争時代にもしばしば「幻燈会」なるものが劇場で開かれて見に行った。県出身の若・・・ 寺田寅彦 「映画時代」
・・・ また火山の生因として海水が地下に滲透し、それが噴火山の根を養うという現代でもしばしば繰り返される仮説もまたその端緒をルクレチウスに見いだすことができるのである。 ナイルの洪水の問題についても四箇条のオルターネティヴがあげてある。こ・・・ 寺田寅彦 「ルクレチウスと科学」
・・・の序文の中に、ナイル河の氾濫を予言することで支配力を保っていた埃及の僧の秘密について面白い物語がある。科学の力、その美、そのよろこび、そこにある人間性を知らせる良書の一つとして岩波新書の「北極飛行」をあげることは、恐らく今日の知識人にとって・・・ 宮本百合子 「市民の生活と科学」
出典:青空文庫