・・・一体芸術家には、トルストイのように、その人がどう人生を見ているかに興味のある人と、フローベールのように、その人がどう芸術を見ているかに興味のある人と二とおりあるらしい。菊池なぞは勿論、前者に属すべき芸術家で、その意味では人生のための芸術とい・・・ 芥川竜之介 「合理的、同時に多量の人間味」
・・・ フランス文学では、十九世紀だったらばたいてい皆、バルザック、フローベル、そういう所謂大文豪に心服していなければ、なにか文人たるものの資格に欠けるというような、へんな常識があるようですけれども、私はそんな大文豪の作品は、本当はあまり読ん・・・ 太宰治 「わが半生を語る」
・・・を見抜いて、それはラディゲであるとか、或はフローベルであろうかとか、当てものが一つの文学の仕事であるならば、それは文学的クイーズであるにすぎないだろう。 日本のきょうの文学、しかも西欧的なものを意欲していると云われる人々の文学にあるこの・・・ 宮本百合子 「「下じき」の問題」
・・・彼はそのとき、アメリカの作家としてスタインベック、フランス古典第一位にバルザック、つづいてフローベール、モーパッサン、スタンダール、メリメ、マルセル・プルーストらの名をあげた。バルザック研究がソヴェトの学者グリフツォフ博士によって行われてい・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・ 彼の秀れた教師フローベルはモウパッサンにこういって教えた――「世の中に石ころでも二つ全く同じ石ころというものはない。それを書き分けろ」――と。モウパッサンはそのように努力した。けれども表面に現れる現象だけを追究して、違ったもの違ったも・・・ 宮本百合子 「問に答えて」
・・・この辞典において、リアリズムに連関して現れている芸術家はゾラ、フローベル、モネ、セザンヌ等であり、しかも編者は明瞭な言葉でリアリズムの階級性にも言及している。「我々マルクス主義者の云うリアリズムをはき違えて、あたかもそれが十九世紀後半の写実・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
出典:青空文庫