・・・第二ページはおかあさんの留守に幼少な娘のリエナが禁を犯してペチカのふたを明け、はね出した火がそれからそれと燃え移って火事になる光景、第三ページは近所が騒ぎだし、家財を持ち出す場面、さすがにサモワールを持ち出すのを忘れていない。第四ページは消・・・ 寺田寅彦 「火事教育」
・・・一間に一間半もある大ペチカのある病院の台所の隅で ターニャは代数の方程式を書くのだ。――お湯ぬるくありませんか――丁度いい 一寸黙って居たがターニャは愉しそうに伸びをして、両腕を頭の後に組み乍ら云った――もうじき私、休みを貰・・・ 宮本百合子 「無題(七)」
・・・室には昔風なペチカがたかれ、暖かい。丁度茶を飲んでるところで、テーブルに野苺のジャムが出ていた。 ――一口お茶のんでいらっしゃいよ。明日の晩はもう飲みたくたって私の家の茶なんぞ飲めませんよ。 ――でもね、マリア・アンドレヴナ。 ・・・ 宮本百合子 「モスクワの辻馬車」
出典:青空文庫