・・・という標が貼られてある。自家用自動車は、特殊会社のほかは五百万円以上の会社の社長級からでなくては動かせないことになったという噂だから、そうだとすれば「自」というマークは持ち主の身上を街上にさらして或る意味では示威しているような結果にもなり、・・・ 宮本百合子 「新しい美をつくる心」
・・・第一次大戦後のドイツではこの一九二三年にあのインフレーション、マークの下落が起った。その情勢が、ドイツ・フランス等の大衆を団結させ、左翼の組織は拡大した。孫文派が広東政府を樹立し、中国国民党宣言を発表した。京漢鉄道総工会の成立大会を武力解散・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第二巻)」
・・・ 良人は縁側に出、いつの間にか「マーク、マーク」と云う名をつけて仔犬を呼んだ。 マーク。アントニーを思い出し私は微笑した。夏目先生のところであったかヘクターと云う名の犬が居たのは。―― 此仔犬は、アントニーと云う・・・ 宮本百合子 「犬のはじまり」
・・・「最近は、私自身の関するせまい職域の限りでも、いわゆるレッド・マークとか、学問の自由というような新しい問題まで発生してきている。」「学問の自由を剥奪することがいかに危険なことであるかは、先年来すでに苦しい経験ずみであるにもかかわらず、今日ま・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・幼馴染で、謙遜で、スーザンの内面的な強烈さ、優秀さを十分評価しているマークとの結婚は、一人の男の子と女の子とを二人の間にもたらして、終りを告げた。マークはチフスで急に死んだのであった。しかし、マークはただチフスで命をおとしたのだろうか。医者・・・ 宮本百合子 「『この心の誇り』」
・・・またあるものは、いろいろの社会心理のモメントをとらえて、いわば三越や白木屋のマークが、いつか日本人の眼にしみこんでしまっているように、日本の人民に印象づけられて来ている。 その著しい例は日本の天皇の一族に対する日本人民の感情の導かれかた・・・ 宮本百合子 「戦争はわたしたちからすべてを奪う」
・・・それら一握りの新マーク階級の人々は彼等の特権にとって有利でない人民的な生産様式にドイツの社会が進化してゆくことをのぞまなかった。その特権ある惨酷な人々の利害に、そうとはしらずに結びつけられたのが、同情すべきドイツの人々の祖国愛の感情であった・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
・・・は有名なアメリカのユーモア作家マーク・トウェンの姪、アリス・ウエブスターによって書かれ、やはり孤児院で育った娘ジャーシャの物語である。ジャーシャは「快活で、率直で、機智にとみ、人生に対して楽天的で、しかも独立心にもゆる魅力ある近代女性」とし・・・ 宮本百合子 「若い婦人のための書棚」
・・・これはマークの札束を鞄に入れて歩いて、街の乞食の小僧が「小父ちゃん一万マークお呉れよパンを買うんだから……」と言ったという一つ話が伝わっているドイツの大恐慌の七、八ヵ月以前の状態とほぼひとしい形を示している。最低二十五倍の物価の昂騰があるわ・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫