・・・印度をはじめとするアジアの諸国は、そのゆたかな天然の資源と、生産の発達が遅れている半封建的社会の条件を利用されて、ヨーロッパの資本主義の植民地または半植民地として、土着の民族のいたましい生活がつづきました。 第二次世界大戦ののち、アジア・・・ 宮本百合子 「新しいアジアのために」
・・・筆者の矢田喜美子という方は、どなたか存じませんけれども、この記事は、何となく私の心にのこりました。ヨーロッパから最近帰って来たある日本人が、今日の日本をみて、みんなの生活が無計画で、食えないといいながらたかいタバコをプカプカふかしている、政・・・ 宮本百合子 「新しい卒業生の皆さんへ」
・・・ ヨーロッパの社会でも、女らしさというものの観念はやはり日本と似たりよったりの社会の歴史のうちに発生していて、あちらでは仏教儒教の代りにキリスト教が相当に女の天真爛漫を傷つけた。原始キリスト教では、キリスト復活の第一の姿をマリアが見たと・・・ 宮本百合子 「新しい船出」
「伸子」は、一九二四年頃から三年ほどかかって書かれた。丁度、第一次ヨーロッパ大戦が終った時から、その後の数年間に亙る時期に、日本の一人の若い女性が、人及び女として、ひたすら成長したい熱望につき動かされて、与えられた中流的な環・・・ 宮本百合子 「あとがき(『伸子』第一部)」
・・・「お前はヨーロッパを征服する奴は何者だと思う」「それは陛下が一番よく御存知でございましょう」「いや、余よりもよく知っている奴がいそうに思う」「何者でございます」 ナポレオンは答の代りに、いきなりネーのバンドの留金がチョッ・・・ 横光利一 「ナポレオンと田虫」
・・・ 中世の末にヨーロッパの航海者たちが初めてアフリカの西海岸や東海岸を訪れたときには、彼らはそこに驚くべく立派な文化を見いだしたのであった。当時のカピタンたちの語るところによると、初めてギネア湾にはいってワイダあたりで上陸した時には、・・・ 和辻哲郎 「アフリカの文化」
この問題を考えるには、まず応仁の乱あたりから始めるべきだと思うが、この乱の時のヨーロッパを考えると、レオナルド・ダ・ヴィンチは二十歳前後の青年であったし、エラスムス、マキアヴェリ、ミケランジェロなどはようやくこの乱の間に生まれたのであ・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
・・・あるが、そういう多種類の樹木の一々が、非常に具合のいい湿気に恵まれて、その樹木に特有な葉の色を、最も純粋に発揮しているのかもしれない。あるヨーロッパの画家が、新緑ごろの嵐山を見て、緑の色の種類のあまりに多いのに驚嘆した、という話を聞いたこと・・・ 和辻哲郎 「京の四季」
・・・自分は彼のヨーロッパ紀行に楽しい望みをかける点において、人後に落つるものでない。しかしその「望み」のうちには右のごとき期待と祈りが強く混じているのである。付記。この文章は十七年前に書かれたものであるが、その後の年月はこの文章の誤・・・ 和辻哲郎 「享楽人」
・・・ しかしこの直接印象の希薄は、想像力の集中と、省察の緊張とによって、ある程度まで救うことができる。そうしてそれは我々日本人が世界的潮流に遅れないために不断に努力すべき所である。 ヨーロッパ人は今異常に苦しんでいる。日本人はその苦しみ・・・ 和辻哲郎 「世界の変革と芸術」
出典:青空文庫