・・・ 父親がきの毒で、一時は、書くのを止めようかとも思ったけれ共、さりとて、黙ったまますむ事でもないので、ロール手紙に禿びた筆で、不様な手紙を書き始めた。 まとまりのない、日向の飴の様な字をかなり並べる間、お金は傍に座って筆の先を見なが・・・ 宮本百合子 「栄蔵の死」
・・・ In society, she played the most pitiable role. Everybody knew her, and nobody paid her any attention. She was ver・・・ 宮本百合子 「一九二五年より一九二七年一月まで」
・・・ 平らな路の間だけに、大きな花崗岩のロールを転がすことになった。 その日はもう大変にいい天気で、このごろにない暖かな日差しが朝早くから輝いて、日が上りきるとまるで春先のようにのどかな気分が、あたりに漂うほどであった。 一区切り仕・・・ 宮本百合子 「禰宜様宮田」
出典:青空文庫