・・・パアル・バックの作風その他。文学における今日の日本的なもの。「大人の文学」論の現実性。鴎外・芥川・菊池の歴史小説。鴎外・漱石・藤村など。三月の第四日曜。ジイドとプラウダの批評。四月。ヒューマニズムへのみち。五月。山本有三氏の境地。・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・ バックの作風から拡る連想の一つとして、やや一般的な作家の態度についての話題であるが、この間、読売新聞の座談会で、数人の婦人作家があつまり、いろいろ話が弾んだ。終りに近く、作家の書く態度の一つとして、私は自分が現実に対して人情に堕せ・・・ 宮本百合子 「パァル・バックの作風その他」
・・・ バルザックと同時代の作家であるメリメの作風と比べて、これは又何たる相異であろう。フランス散文の規範のようなメリメは異国趣味でロマンティックな題材と情熱とを、厳しく選択して理性的に配置した文章の鮮明な簡勁な輪廓の中にうちこんでいる。メリ・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・などの作風によって親しみやすく思われている永井荷風に着目することとなった。 一方『近代文学』『黄蜂』などは、『新日本文学』とはちがった角度から、新しい文学の誕生のために努力した。『新日本文学』は小沢清「町工場」つづいて熱田五郎「さむい窓・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
・・・ 文学がどんなに社会的な性質をもっているものであるかということは、婦人作家として近頃進み出して来ている女のひとたちの生活と作風とが雄弁に語っていると思う。岡本かの子氏、小山いと子氏、川上喜久子氏、いずれもそれぞれ生活にゆとりのある中年の・・・ 宮本百合子 「婦人作家の今日」
・・・ ところが、二葉亭四迷の芸術によって示された文学の方向、影響は、上述の日本の事情によってそのままには発展させられず、硯友社尾崎紅葉等の作風に遮断されている。 紅葉が活動した時代、日本には既に憲法があり、国会が開かれており、官員さんの・・・ 宮本百合子 「文学における今日の日本的なるもの」
・・・アンダスンの詩人らしい気象、アメリカの効用主義的社会通念に対する反抗が主題となっていて、文章もリズムを含んで感覚的で、一見主観的な独語のなかに客観的な批判をこめて表現する作風など、ドライサアとは全く異っていて、近代の心理的手法である。 ・・・ 宮本百合子 「文学の大陸的性格について」
・・・ ロマンチシズムがある社会的時期に示す危険性というものが人々の注目をひくようになったのは一二年来のことであるが、時局が紛糾したとき、作家らしくない作家的面を露出するのがかえって日頃、いわゆる抒情的な作風で買われている作家であることは、意味・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・ところが、その曲りの果てでプロレタリア文学にぶつかり、そこから撥ねかえったものとして渡欧まで主知的と云われた主観的作風にいた。このことは、人間及び作家としての横光氏の生き方を観た場合、見落すことの出来ない、一つの特徴である。現実につき入り、・・・ 宮本百合子 「「迷いの末は」」
・・・例えば、紅葉が今日まで生きて居たとし、あの作風からどう変化した彼を想像出来得るだろう。鏡花がこの頃雲中語で、源三位にこれは落咄さと片づけられた化鳥を書いて居る。人間氏が「余程変てこに化けて来たようだ。この上はどこまで化けるか分らぬ。どうか早・・・ 宮本百合子 「無題(五)」
出典:青空文庫