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・・・徳川時代の民が土下座したとき、その埃のふかい土は素朴で、けっして現代のドライヴ・ウェイをもたず、全波ラジオをもたなかった。封建生活そのものとしての統一があり、封建の枠の内でつつましいおのれは分裂していなかった。自我の分裂の苦悩を封建人は知ら・・・
宮本百合子
「現代の主題」
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やっと、ラジオの全波が聴けるということになった。 そのことが放送されたのは、九月下旬の或夜であった。田舎の家で、雑音だらけのラジオながら、熱心に九時のニュースをきき、世界の動きが身に伝わる感じでいたら、それにつづいて、・・・
宮本百合子
「みのりを豊かに」