・・・イヤでも黴臭いものを捻くらなければ、いつも定まりきった書物の中をウロツイている訳になるから、美術だの、歴史だの、文芸だの、その他いろいろの分科の学者たちも、ありふれた事は一ト通り知り尽して終った段になると、いつか知らぬ間に研究が骨董的に入っ・・・ 幸田露伴 「骨董」
・・・しかし現在のように科学というものの中に、互いに連絡のよくとれていない各分科が併立して、各自の窮屈な狭い見地から覗い得る範囲だけについていわゆる専門を称えている間は、一つの現象の概念が科学的にも雑多であり、時としては互いに矛盾する事さえあるの・・・ 寺田寅彦 「地震雑感」
・・・広い文化の分野でせまい分科的にではあるかも知れないが綜合的な世界の文化を縦に貫ぬいた年表が欲しいのである。困難な仕事であろうが、文化貢献の為乗り出して下さる出版社がないものだろうか。〔一九三六年六月〕・・・ 宮本百合子 「業者と美術家の覚醒を促す」
・・・良人はコロンビア大学に植物を教え、夫人は、同じ大学に、矢張り植物の一分科を受持っています。子供はなく、六室ばかりのアパートメントに住んでいるのです。 R氏は、大抵朝の九時、十時頃から、午後の四時頃まで大学に行っています。自分の研究室で授・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
出典:青空文庫