・・・、評者は、或いは作者の話に相槌を打ち、或いは不審を訊この頃、馬鹿教授たちがいやにのこのこ出て来て、例えば、直線上に二点を置き、それが作者と読者だとするならば、教授は、その同一線上の、しかも二点の中間に割り込み、いきなり、イヒヒヒヒである。物・・・ 太宰治 「如是我聞」
・・・ 前章にいえる如く、当世の学者は一心一向にその思想を政府の政に凝らし、すでに過剰にして持てあましたる官員の中に割込み、なおも奇計妙策を政の実地に施さんとする者は、その数ほとんどはかるべからず。ただに今日、熱中奔走する者のみならず、内外に・・・ 福沢諭吉 「学者安心論」
・・・彼はさっと立って頭の上から真中に割り込み、また自分で、ツツ、ツツと仲間の方によって行くのである。―― 私共の家にいる文鳥は、名こそ文鳥だけれども、どうも、「彼岸過迄、四篇」の文鳥とは、たちが異うように思われる。漱石先生の心が華奢であった・・・ 宮本百合子 「小鳥」
出典:青空文庫