・・・ 弁証法の功績。――所詮何ものも莫迦げていると云う結論に到達せしめたこと。 少女。――どこまで行っても清冽な浅瀬。 早教育。――ふむ、それも結構だ。まだ幼稚園にいるうちに智慧の悲しみを知ることには責任を持つことにも当らないからね・・・ 芥川竜之介 「侏儒の言葉」
・・・かく高まった地価というものは、いわば社会が生み出してくれたもので、私の功績でないばかりでなく、諸君の功績だともいいかねる性質のものです。このことを考えてみれば、土地を私有する理窟はますます立たないわけになるのです。 しかしながら、もし私・・・ 有島武郎 「小作人への告別」
・・・ それならたとえばクロポトキン、マルクスたちのおもな功績はどこにあるかといえば、私の信ずるところによれば、クロポトキンが属していた(クロポトキン自身はそうであることを厭第四階級以外の階級者に対して、ある観念と覚悟とを与えたという点にある・・・ 有島武郎 「宣言一つ」
・・・それを第四階級者が取り上げたといったところが、第四階級の賢さであるとはいえても、第三階級の功績とはいいえないではないか。この意味において私は第四階級に対して異邦人であると主張したのである。 明日になって私のこの考え、この感じはどう変わっ・・・ 有島武郎 「想片」
・・・誰でもその真剣な努力に対しての功績を疑う人はなかろう。しかしながら以前と違って、労働階級が純粋に自分自身の力をもって動こうとしだしてきた現在および将来において、思いやりだけの生活態度で、労働者の運動に参加しようとすることが、はたして労働階級・・・ 有島武郎 「片信」
一 島田沼南は大政治家として葬られた。清廉潔白百年稀に見る君子人として世を挙げて哀悼された。棺を蓋うて定まる批評は燦爛たる勲章よりもヨリ以上に沼南の一生の政治的功績を顕揚するに足るものがあった。 沼南には最近十四、五年間会っ・・・ 内田魯庵 「三十年前の島田沼南」
・・・ッショナルとして完全に存在するを得るに到ったは畢竟時代の進歩であるが、博文館が此の趨勢に乗じて率先してビジネスとしての雑誌を創め各方面の操觚者を集めてプロフェッショナルとしても存在し得る便宜を与えたる功績は決して争われないであろう。 凡・・・ 内田魯庵 「二十五年間の文人の社会的地位の進歩」
・・・ただ地図を見てではこんな空想は浮かばないから、必要欠くべからざるという功績だけはあるが……多分そんな趣旨だったね。ご高説だったが……「――君は僕の気を悪くしようと思っているのか。そう言えば君の顔は僕が毎晩夢のなかで大声をあげて追払うえび・・・ 梶井基次郎 「海 断片」
・・・の思想をあげて、その功績としている。カントは外の世界も、内の世界も徹頭徹尾因果律に支配されているとして、因果関連からの自由を否定した。自由とは第一原因が因果関連の中に入りこむこととした。自由とは自然法則に従って進行する一系列の現象を自ら始め・・・ 倉田百三 「学生と教養」
・・・不明瞭な点を残さず、悉くそれを赤ときめて、一掃してしまえば功績も一層水際立って司令部に認められる。 大隊長は、そのへんのこつをよくのみこんでいた。彼は先ず武器を押収することを命じた。それから、パルチザンを、捕虜とすることを命じた。それか・・・ 黒島伝治 「パルチザン・ウォルコフ」
出典:青空文庫