-
・・・銀の箸ででもあったら、その箸のひとあては、茶碗のふちで涼しい音でも立てるのであったろうが、雑用の厚手な茶碗と木の箸で、その音はカチとカタの間にきこえた。それでも、おゆきのお茶づけには独特のリズムがあり、菊見せんべいの職人の体のふりようとせん・・・
宮本百合子
「菊人形」
-
・・・異様に白く、或は金焔色に鱗片が燦めき、厚手に装飾的な感じがひろ子に支那の瑪瑙や玉の造花を連想させた。「なあ、ヘェ、あてらうちにこんなん五匹いるわ」 それは普通の出目金で、真黒なのが、自分の黒さに間誤付いたように間を元気に動き廻ってい・・・
宮本百合子
「高台寺」