・・・ 右第一条より第二十三条に至るまで、概して我国古来の定論に反するのみならず、前には旧女大学の条々を論破し去て、更らに新女大学の新主義を唱うることなれば、新旧方円相容れずして世間に多少の反対論もある可し。旧説は両性の関係を律するに専ら・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・かつ今日の世界は西洋文明の風に吹かれてこれに抵抗すべからざるの時勢なれば、文明の風に多妻多男を嫌忌して、そのこれを嫌忌するの成跡は甚だ美にして、今日の人の家を成し国を立つるに最も適当し、これに反するものは必ず害を被りて免るべからざること、既・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・一九四六年の日本でこそ、封建的なものは、民主的なものに反する性質をもっていることが一般の感情に明瞭にうけとられていたし、対立する本質の言葉としてつかわれてもいた。現在では、すべての封建的な意図が、その表現はかならず日本の民主化と復興のため、・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・させようとするかのように書いているが、全く事実に反する。この三年間、私は自分の仕事への数多くの批評に対して沈黙を守りすぎてきた。 文学作品は作品そのものの力で人の心に生きるものであり、歴史が価値を証明する。長篇を書く途中での論争を欲しな・・・ 宮本百合子 「河上氏に答える」
・・・の夢であった整備された研究室の実現も考え、また夫として父親としての家庭に対する愛情から、いくらかの特許独占の方法を思わないでもなかったらしかったが、結局は彼ら夫婦を結んでいるまじり気のない科学的精神に反するものとしてそのことを放棄した。わず・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人」
・・・ずかれ、眉をかいた細君が、一種の自己陶酔の中で高々とうたい上げる祝詞のような皇軍の歌のかげに、生きて、食っているもののいいようのない脂のこさ、残酷さを感じる心は、決して銃後の女のまじめさと心やさしさに反するものではない。 女のやさしさと・・・ 宮本百合子 「祭日ならざる日々」
・・・白いものを権力をもって黒いとすることは人道に反することである。権力を用いて白を黒にするなどということは全世界の人類を侮べつするものである。私はヒューマニストとしてこれと闘わなければならないと思い、よろこんで三鷹の弁護に立つものであります」と・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・それだのに何故、その判断と反する政党に隷属して、一応にしろ言論の自由のある今日、心ならずも、と汗を拭きつつその党のゴジ論をやるのだろうか。答えは明瞭である。目先の分別では、今日彼の属するゴジ政党は、その社会主義との盛り合わせで、多数党の一つ・・・ 宮本百合子 「矛盾とその害毒」
・・・それを、そうスラリと云わずに「温室のことで怒ったりしては 彼の意志に反する」とか、又このようなカラミでやる。 つまり石井をことわったらしい。○mが彼というとき、聞くものは体のどこかを突かれたような感じをうけ、いやで毒々しく感じた・・・ 宮本百合子 「無題(九)」
・・・こういう希願は、一見きょうの多数の女又親たちの置かれている悪事情に反するようであるのに、つきつめて見れば、この声がまともに応えられる時にこそ、人間らしい自主的な意図での制限も可能であることになる。女として見れば、きょうの世の中には生ませられ・・・ 宮本百合子 「夜叉のなげき」
出典:青空文庫