・・・ 答 彼は目下心霊的厭世主義を樹立し、自活する可否を論じつつあり。しかれどもコレラも黴菌病なりしを知り、すこぶる安堵せるもののごとし。 我ら会員は相次いでナポレオン、孔子、ドストエフスキイ、ダアウィン、クレオパトラ、釈迦、デモステネ・・・ 芥川竜之介 「河童」
・・・科学者流の目で見れば、これも一つの文化的自然現象であって可否の議論を超越したものであるとも考えられる。むしろわれわれはこの現象がどうして発生したかを研究し、またその将来がどうなるであろうかということを考察した上で、これに対する各自の態度を決・・・ 寺田寅彦 「俳句の型式とその進化」
・・・ これに聯関して起る問題は科学の基礎や方法に関する事柄を初学者に吹き込む事の可否である。中学校で物理学を教える場合に、方則の成立や意義や弱点を暗示するのは却って迷いを生じ誤解を起すという説もある。自分は教育家でないが、ただ自分一己の経験・・・ 寺田寅彦 「方則について」
・・・私はこの簡単な物差ですべてのものを無雑作に可否のいずれかに決するように教えられて来たのであった。骨牌のような札の片側には「自」反対の側には「他」と書いてある。私は時と場合とに応じてこの札の裏表を使い分ける事を教えられた。 見ているうちに・・・ 寺田寅彦 「厄年と etc.」
・・・大阪へ来て文芸を談ずると云うことの可否は知りません。儲ける話でもしたら一番よかろうと思っているんですが、「文芸と道徳」では題をお聴きになっただけでも儲かりません。その内容をお聴きになってはなお儲かりません。けれども別に損をするというほどの縁・・・ 夏目漱石 「文芸と道徳」
・・・父母は唯発案者にして決議者に非ず、之を本人に告げて可否を問い、仮初にも不同心とあらば決して強うるを得ず。直に前議を廃して第二者を探索するの例なれば、外国人などが日本流の婚姻を見て父母の意に成ると言うは、実際を知らざる者の言にして取るに足らず・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・だが、キュリー夫人へのその讚歎をそれなりすらりと日本の現状にふりむけてみて、そこにある日本の婦人科学者の成長の可能条件の可否に即して真面目に考えた人たちは果して何人在っただろう。フランスであったからこそ、キュリー夫人が女で科学者であるという・・・ 宮本百合子 「市民の生活と科学」
・・・ 二、純粋な動機で批評すれば、或る月には、或る作品について多く書かれ、又、或る月は、沈黙であると云うことが、存在の可否などを論じさせない自然な、本当の状態であると思います。〔一九二二年一月〕・・・ 宮本百合子 「純粋な動機なら好い」
・・・日本の大衆の誰もが戦争の可否について議論し、一票を投じ、決心して参加した戦であったなら、その歴史的意義と個人の運命への影響を反省もし、そこから人間らしい何かをくみとることも可能な経験だったろう。ところがそうではなかった。頭から脳髄をとり、心・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・ 抑々、産児制限などと云う問題は、総論として一朝一夕に可否を断定し得ないものではありますまいか。それを現在の社会状態に鑑みて是とする者、愛国主義、或は軍備主義の尊重から、国家滅亡論として極端に拒絶する者。又、実際、それに対する箇人の道徳・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
出典:青空文庫