・・・ユダヤ人種排斥という日本人にはちょっと分らない、しかし多くのドイツ人には分りやすい原理に、幾分は別の妙な動機も加わって、一団のアインシュタイン排斥同盟のようなものが出来た。勿論大多数は物理学者以外の人で、中にはずいぶんいかがわしい人も交じっ・・・ 寺田寅彦 「アインシュタイン」
・・・ その年雪が降り出した或日の晩方から電車の運転手が同盟罷工を企てた事があった。尤わたしは終日外へ出なかったのでその事を知らなかったが、築地の路地裏にそろそろ芸者の車の出入しかける頃、突然唖々子が来訪して、蠣殻町の勤先からやむをえず雪中歩・・・ 永井荷風 「十日の菊」
・・・その後日英同盟の意識で占領された時代もあります。かく推論の結果心理学者の解剖を拡張して集合の意識やまた長時間の意識の上に応用して考えてみますと、人間活力の発展の経路たる開化というものの動くラインもまた波動を描いて弧線を幾個も幾個も繋ぎ合せて・・・ 夏目漱石 「現代日本の開化」
・・・しかし見物が積極的に、この長時間に比例するほど慾張るが故、役者もやむをえず働らくとすれば役者ははなはだ気の毒である。同盟してもっと見物賃を上げるが好い。牛肉でも葱でも外の諸式はもっとぐっと高くなりつつある。・・・ 夏目漱石 「明治座の所感を虚子君に問れて」
・・・ソヴェト同盟のように、社会主義的民主社会に歩み入っている国。 その国々で、婦人たちの社会生活条件は其々に違っている。未熟な段階から、より進んだ段階。更にそこまで進んでも猶人間社会の発展の可能は、かくも大きい希望にみちたものであるというこ・・・ 宮本百合子 「合図の旗」
ソヴェト同盟の南にロストフという都会がある。ドン川という大きい河に沿って、花の沢山咲いた綺麗な街が、新しい労働者住宅やクラブの間にとおっている。私は七月のある朝、ドイツからソヴェト同盟へやって来たドイツの労働者見学団といっ・・・ 宮本百合子 「明るい工場」
・・・という題で、ソヴェト同盟旅行の部分だけ翻訳出版された。一九四一年十一月より五ヵ月ばかり、連合軍側の戦時特派員という資格で、アフリカ、近東、ソヴェト同盟、インド、中国を訪問し、ファシズム、ナチズムに対して民主主義をまもろうとする国々のたたかい・・・ 宮本百合子 「明日の知性」
・・・まず、アジアの北の広い部分を占めてソヴェト同盟の、いくつかの民族自治共和国をふくむ地域があります。広大なその地域と、これもまた広い中華人民共和国との間にはさまっているために、せまいように見える蒙古人民共和国があります。三十八度線を区ぎりとし・・・ 宮本百合子 「新しいアジアのために」
・・・ ソヴェト同盟における新しい内容での一夫一婦制の確立は、男女の日常生活に作用する社会関係全体が、彼ら自身の犠牲多い積年の努力で健康な土台の上に組み直されて始めて、現実の可能となったのであった。 日本の解放運動は、広く知られているとお・・・ 宮本百合子 「新しい一夫一婦」
・・・世界民主主義婦人連盟、反ファシスト同盟、人権擁護同盟そのほかに属している婦人たちの数も少くない。これらの婦人たちが切実に要求しているのは平和であり、民主的であってゆたかな生活の安定であった。その事実を選挙によって表現し、政策をその方向に動か・・・ 宮本百合子 「新しい潮」
出典:青空文庫