・・・ 人情というものの内容やその理解、文学との連関は複雑な問題であり、特に現代の日本の作家は、周密にこれをとりあげ、見直さなければならないと思う。 小説を書き、或は詩を書き、評論を書くにさえ、何等かの意味でこの人生を愛す心持、書かんとす・・・ 宮本百合子 「パァル・バックの作風その他」
・・・とし、小説というものは「老若男女善悪正邪の心のうちの内幕をば洩す所なく描き出して周密精到、人情をば灼然として見えしむる」ものでなければならず、而も「よしや人情を写せばとて其皮相のみを写したるものはいまだ之を真の小説とは言ふべからず。其骨髄を・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・ 五 周密な用意と研究を必要とすることだが、「転換時代」にあらわれている唯物弁証法的把握上の失敗は、先ずどこか機械的な点で目立つ。 書かれた点からだけ見ると作者は、こう考えたように見える。資本主義第三期・・・ 宮本百合子 「プロレタリア文学における国際的主題について」
・・・ 訳者の序の引用文に、この作家がその創作を政治的な問題に意識的に服従させ而も芸術的形象の完成を妨げなかったことをかかれているが、今日私たちの置かれている環境の現実はこういう点に関して周密な考察を必要としているのだと思う。文学作品の創られ・・・ 宮本百合子 「翻訳の価値」
・・・今日までに刊行されているゴーリキイの作品の全集や、最近の文化、文学運動に対する感想集等の外に、今後はおそらく周密に集められた書簡集、日記等も発表され、ますます多くの人にゴーリキイ研究の材料と、興味とを与えることであろう。 既にソヴェト同・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・今日までに刊行されているゴーリキイの作品の全集や、最近の文化・文学運動に対する感想集等の外に、今後はおそらく周密に集められた書簡集、日記等も発表され、ますます多くの人にゴーリキイ研究の材料と興味とを与えることであろう。 ゴーリキイは、全・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」
・・・と、熱烈周密なその「女大学評論」を著しているのは、今日顧みてまことにつきない感想を誘われる。日本の社会の習慣や男の生活を具体的に観察すれば、「我輩は女大学よりも寧ろ男大学の必要を感ずる者なり」という立場に立って、福沢諭吉は、十九ヵ条の一つ一・・・ 宮本百合子 「三つの「女大学」」
・・・しかも彼の心理観察の周密は常に描写のカリカチュアに堕するのを救う。従って彼の描写は簡素の限度だと言う事もできる。 ストリンドベルヒの頭は恐ろしくよい。ゾラの頭はきわめて平凡である。五 告白の欲望はともすれば直ちに製作衝動・・・ 和辻哲郎 「生きること作ること」
出典:青空文庫