出典:青空文庫
・・・そしてあの世棄人も、遠い、微かな夢のように、人世とか、喜怒哀楽とか、得喪利害とか云うものを思い浮べるだろう。しかしそれはあの男のためには、疾くに一切折伏し去った物に過ぎぬ。 暴風が起って、海が荒れて、波濤があの小家を撃ち、庭の木々が軋め・・・ 著:ランドハンス 訳:森鴎外 「冬の王」
・・・たとえば我々はある人の顔の筋肉が動くのを見て、その人の喜怒哀楽やまたそれ以上に複雑なさまざまの心持ち・思想などを感知する。我々の眼に映じたその微かな筋肉の動きと我々の感じたその内生とは、実際全く似よりのないものである。この二つは何ゆえに直接・・・ 和辻哲郎 「「自然」を深めよ」
・・・ 我々が感情を持つ、そうして喜怒哀楽に動く。これもまた白己の表現である。 芸術の創作は要するにこの自己表現の特殊の場合に過ぎない。三 生命全体の活動が旺盛となり、人格価値が著しく高まって来ると、そこにこの沸騰せる生命・・・ 和辻哲郎 「創作の心理について」