・・・ それならどういう風に関係が有ったろうかといいますと、便宜上その答案を三つに分けて申しますが、馬琴の小説中の人物は大別すれば三種類あるのでして、第一には前に申しました一篇の主人公や副主人公やその他にせよ、とにかくに篇中の柱たり棟たる役目・・・ 幸田露伴 「馬琴の小説とその当時の実社会」
・・・ さて一方文学を攷察して見まするにこれを大別してローマンチシズム、ナチュラリズムの二種類とすることが出来る、前者は適当の訳字がないために私が作って浪漫主義として置きましたが、後者のナチュラリズムは自然派と称しております。この両者を前に申・・・ 夏目漱石 「教育と文芸」
・・・ かく人間の理想を三大別したところで、我々、すなわち今日この席で講演の栄誉を有している私と、その講演を御聴き下さる諸君の理想は何であるかと云うと、云うまでもなく第二に属するものであります。情を働かして生活したい、知意を働かせたくないと云・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・いずれも大別すれば系譜的な作品と云える性質をもっている。 今年特に系譜的な作品が多く現れたということは、現代の社会のどんな文学への現れなのだろう。 作年は素材主義の荒っぽさに対して、文学の文学性が再び顧みられたにつれて、短篇の真実さ・・・ 宮本百合子 「今日の文学の諸相」
・・・明確に、現実の生活のありようがそれを示しているままに、大衆と一口に云っても内容は様々であって、文学に対しても大別進歩的要求をもつもの、保守的要素をもつものとあって、日常生活と云われる関係の内側でも大衆自身利害の対立や相異を有するものであり、・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ まして、現代の日本の男性に表われて居る二つの型――勿論其は至極粗雑な大別ではあっても――は、保守的婦人観と、進歩的婦人観とに分ち得ると思います。 女性の感情の至純さと、素質の平等、一言に云えば夫人の良人に対する知と云うものに尊敬の・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・ 三分の一ほどの上は白いフワフワ雲にかくれて現われた部分は銀と紺青との二色に大別されて居る。 けれ共ジーッと見て居るとその中に限りない色のひそんで居るのを見る。 一目見た時に銀に見える色も雲のあつい所は燻し銀の様に又は銀の箔の様・・・ 宮本百合子 「旅へ出て」
・・・更に小林多喜二が持っていた勘は、前者が二様であっても大別一系列の中に包括し得る性質であるに反して、その本質を異にしていた。これは、誰にとっても極めて理解しやすい実例であると思う。 今日ほど、文学の動揺が甚しかったことはなかった。文学に思・・・ 宮本百合子 「文学上の復古的提唱に対して」
・・・ 二 人間の生存過程を、学として研究し或る法則、類別を見出す心理学者、生理学者等は、各個人の運命的な時期、年齢を、青年期、更年期と大別しているようです。 青年期は、十六七歳から二十二三歳迄、更年期は丸四・・・ 宮本百合子 「われを省みる」
出典:青空文庫