・・・ 右は人間の交の大略なり。その詳なるは二、三枚の紙につくすべからず、必ず書を読ざるべからず。書を読むとは、ひとり日本の書のみならず、支那の書も読み、天竺の書も読み、西洋諸国の書も読ざるべからず。このごろ世間に、皇学・漢学・洋学などいい、・・・ 福沢諭吉 「中津留別の書」
・・・いくらか誤りがあるかもしれないが大略はそういう意味の意見をきいたそうだ。こういう意見も文化に対する政策というものが、その一つの構成要素として現在の幅のなかにふくんでいるものであろう。 日本の民衆にシェークスピアを理解させたいという希望が・・・ 宮本百合子 「明日の実力の為に」
今年の文学ということについて大略の印象をまとめようとすると、一つの特徴的な様相がそこに浮んで来るように思う。 それは作品と作家との間に生じた問題とも云える種類のものである。私たちが偏らない心で今年の文学を思いかえしたと・・・ 宮本百合子 「昭和十五年度の文学様相」
・・・ 大略、右のような背景の上に現今の米国人の生活が営まれているとすれば、広くは大統領と国民との関係、狭くは、親子、夫婦、雇主対被雇人の関係に至るまで、何等かの形式を通じて、これ等根本の性格に帰着するのは、自明な事実ではありませんでしょうか・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・ はたからは、云いならわされている通りおか目八目で、そのいりこんだ関係の大略が見えている場合もあって、いろいろの観察が下されてもゆく。だけれども、作家当人は、生活も文学も自分の内心で自分を動かす極めて執拗で強情でわき目をふりたがらない何・・・ 宮本百合子 「遠い願い」
・・・東洋の足どりをその大略に於てとり入れることは果して絶対に不可能であったろうか。特に今日の東半球の波瀾は、読者の心に渇望に近いその要求を呼びさましているのである。 私たちの常識が受けている苦痛は、過去の歴史が、いつも地球を西と東とにわけて・・・ 宮本百合子 「新島繁著『社会運動思想史』書評」
・・・ ジェルテルスキーは、聞き手がもうすっかり知り抜いているに違いないのに、改めて、極めて自然に質問するので、礼儀上からでもそれに答えなければならない不愉快を忍びつつ、大略を話した。猫背に見える程ベルトを高いところで締めたアメリカ型の外套を・・・ 宮本百合子 「街」
・・・千差万別の事情ではありながら、大略今日の物質と精神の窮乏の状態、それに屈し切れない人間性の身もだえに於ては百万人の若い女が近似している。それを積極的なものに発展させ、転化させようとする努力こそ必要である。〔一九三七年八月〕・・・ 宮本百合子 「私たちの社会生物学」
・・・「大略がさつなるをもつて、をごりやすうして、めりやすし」。好運の時には踏んぞりかえるが、不幸に逢うとしおれてしまう。口先では体裁のよいことをいうが、勘定高いゆえに無慈悲である。また見栄坊であって、何をしても他から非難されまいということが先に・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫