・・・「ワッハッハ。大笑いだ。うまくやってやがるぜ」 突然向こうのまっ黒な倉庫が、空にもはばかるような声でどなりました。二人はまるでしんとなってしまいました。 ところが倉庫がまた言いました。「いや心配しなさんな。この事は決してほか・・・ 宮沢賢治 「シグナルとシグナレス」
・・・拍手が起りましたが同時に大笑いも起りました。というのは私たちは式場の神聖を乱すまいと思ってできるだけこらえていたのでしたがあんまり博士の議論が面白いのでしまいにはとうとうこらえ切れなくなったのでした。一番前列に居た小さな信者が立ちあがって祭・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・大いに笑う彼の顔を見て、一緒に大笑いしずにいることは困難であろう。 或る演説の中で、徳田さんは、日本婦人の一般は、本人たちが自覚している以上のおどろくべき運命に陥っていると語った。そして日本の婦人は誰もが自由にかつえているばかりでなく、・・・ 宮本百合子 「熱き茶色」
・・・と、大笑いに笑って、一層犬に来い、来い、した。「狂犬じゃないわ、お父様これ」「舌出してないから大丈夫よ」「あら狂犬て舌出すの?」「ああ。晴子みたいに」「ひどい!」 散々晴子や佐和子とじゃれ、斑犬は今父の靴の踵にく・・・ 宮本百合子 「海浜一日」
・・・云われた当人は、少し顔を赤らめながら、やっぱり大笑いした。「だが、材料はまだ整理が足りない。ゴチャゴチャしている。いらないところをどうすてるかということは――君、ジャック・ロンドンを読んだかい?」「読みません」「ぜひ読んで勉強し・・・ 宮本百合子 「「鎌と鎚」工場の文学研究会」
・・・ それは傑作だ、と私共は涙の出る程大笑いをした。「皮と身と離るゝ体我もてば利殖の本も買ふ気になれり」 うまかったな、網野さんはなかなかうまい、と百花園のお成座敷の椽でお茶を飲みつつ更に先夜の笑いを新にしたのだが、その時網野さんのユー・・・ 宮本百合子 「九月の或る日」
・・・ これには監房じゅうが笑い出し、実に大笑いをした。 五分苅の、陸軍大尉のふるてのような警視庁検閲係の清水が、上衣をぬぎ、ワイシャツにチョッキ姿でテーブルの右横にいる。自分は入口の側。やや離れてその両方を見較べられる位置に主任が腕・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・去年の二十八日には、私が家をもったおよろこびをしてくれるといって、健坊の両親、栄さん夫婦、徳ちゃん夫婦があつまり、一つお鍋をかこんで大変愉快に大笑いをしました。その晩は安心してのんびり出来るよう、朝六時までかかって私は到頭バルザックを六十八・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ 大笑いです。私は二十三日にお目にかかりにゆきます。何か特別な支障のない限り。[自注6]詩人――プロレタリア詩人、今野大力。『戦旗』とプロレタリア文化連盟関係の出版物編輯発行のために献身的な努力をした。共産党員。一九三二年の文化・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・私は地球を胸に抱きかかえて大笑いをしているのである。 まごついた夢 歩こうとするのに足がどちらへでも折れるではないか、…………… 面白くない夢 金を拾った夢。…………… 笑われた子・・・ 横光利一 「夢もろもろ」
出典:青空文庫