・・・ 第二学年の学年試験の終わったあとで、その時代にはほとんど常習となっていたように、試験をしくじった同郷同窓のために、先生がたの私宅へ押しかけて「点をもらう」ための運動委員が選ばれた時、自分もその一員にされてしまった。そうしてそのためにも・・・ 寺田寅彦 「田丸先生の追憶」
・・・ 学校の講義と言ってもいろいろの種類があるが、その内にはただ教師がふところ手をしていて、毎学年全く同じ事を陳述するだけで済むものもある。そういうのは蓄音機でも代用されはしないかという問題が起こる。それからまた黒板に文字や絵をかいたりして・・・ 寺田寅彦 「蓄音機」
熊本第五高等学校在学中第二学年の学年試験の終わったころの事である。同県学生のうちで試験を「しくじったらしい」二三人のためにそれぞれの受け持ちの先生がたの私宅を歴訪していわゆる「点をもらう」ための運動委員が選ばれた時に、自分・・・ 寺田寅彦 「夏目漱石先生の追憶」
・・・ うっかりしている間に学年試験が目の前に来ていたり、借金の返済期限がさし迫っていたりする。 眠っているような植物の細胞の内部に、ひそかにしかし確実に進行している春の準備を考えるとなんだか恐ろしいような気もする。 ・・・ 寺田寅彦 「春六題」
・・・地理のコロキウムはここで行われ、次の二学年を通じて聴いたペンクの一般地理学の講義もここの講堂で授けられた。気象や地球物理に比べて地理の方は輪講にも講義にも出席者が多く気分がまるで変っていた。気象輪講会は何となく上品にのんびりしていたし、地球・・・ 寺田寅彦 「ベルリン大学(1909-1910)」
・・・ 鶯の声も既に老い、そろそろ桜がさきかけるころ、わたくしはやっと病褥を出たが、医者から転地療養の勧告を受け、学年試験もそのまま打捨て、父につれられて小田原の町はずれにあった足柄病院へ行く事になった。(東京で治療を受けていた医者は神田神保・・・ 永井荷風 「十六、七のころ」
・・・更に生徒の学年成績に匹敵すべきものである。僅一行の数字の裏面に、僅か二位の得点の背景に殆どありのままには繰返しがたき、多くの時と事と人間と、その人間の努力と悲喜と成敗とが潜んでいる。 従ってイズムは既に経過せる事実を土台として成立するも・・・ 夏目漱石 「イズムの功過」
・・・「こちらは第三学年の担任です。このお方は麻生農学校の先生です。」 私はちょっと礼をしました。「で武田金一郎をどう処罰したらいいかというのだね。お客さまの前だけれども一寸呼んでおいで。」 三学年担任の茶いろの狐の先生は、恭しく・・・ 宮沢賢治 「茨海小学校」
一九一四年の夏は、ピエール・キュリー街にラジウム研究所キュリー館ができ上ってキュリー夫人はそこの最後の仕上げの用事と、ソルボンヌ大学の学年末の用事とで、なかなか忙がしかった。フランスの北のブルターニュに夏休みのための質素な・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人」
・・・ 色彩も美しい五ヵ年計画の絵解きから、十月革命の相当のむずかしい歴史に至るまで小学校の学年順に並べた棚が出来ている。 モスクワを留守にしたのはたった一ヵ月未満だった。それだのに、ブルジョア書籍店と同じような体裁だったソヴェト同盟の本屋の・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
出典:青空文庫