・・・これらの場合においても、もしすべての条件がどこまでも精しく与えられおれば結果は必ず単義的に定まるべしというがいわゆる科学的定数論者の立場なり。これはおそらく大多数の科学者の首肯する所なるべし。しかし実際にはこれらのすべての条件が知り難き故に・・・ 寺田寅彦 「自然現象の予報」
・・・そうだとすれば、これだけの強勢な伝播と感染の能力を享有する七五の定数にはやはりそうなるだけの内在的理由があると考えるよりほかに道はないであろうと思われる。 要するに七五の定数律は人のこしらえたものではなくて、ひとりで生まれひとりで生長し・・・ 寺田寅彦 「俳句の精神」
・・・ 以上のごとく考えて来るとこの一見任意的であるかのごとき定座の定数やその位置がなかなか任意ではなくて容易には変更を許さないような必然性をもっているように思われて来るのである。それでこの規定はもちろん絶対ユニークなものではないまでも種々な・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・ソヴェト同盟は、世界のプロレタリアート文化の第一線に立って、さらに新しい自分ら独特の劇を、音楽を、キノを製作し、各劇場は、常に座席の一定数だけ、職業組合を通じて、半額以下で一般勤労者に分けている。 芸術は、階級の武器の一つである。プロレ・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・だから各劇場は毎日、全座席の中の一定数を必ず各職業組合と赤軍のために、呈供している。半額と無料の切符を出しているのだ。 モスクワのメーデーは、あの賑やかさと、全市に翻る赤旗の有様だけでもほんとに見せたいようだが、次の日の五月二日は休みだ・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
出典:青空文庫