・・・是れは財産の問題にして、金さえあれば家事を他人に託して独り学を勉む可しと言うも、女子の身体、男子に異なるものありて、月に心身の自由を妨げらるゝのみならず、妊娠出産に引続き小児の哺乳養育は女子の専任にして、為めに時を失うこと多ければ、学問上に・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・婦人閲覧者のかり出しぐちは、別に塗板がかけられて、一人専任がいた。これは元のとおりである。 きょうもまた、古い昭和初期の新聞を出して貰うのを待ちながら、私は特別の関心で、高い卓のあっち側で事務をとっている黒い上っぱりの三人の男の顔だちを・・・ 宮本百合子 「図書館」
・・・もう一つには、Aが、女子学習院に専任になることにもなったので、正月から、自分は、又新たな住居を探すことになった。 片町からでは、単に往復するだけで、三時間余もかかる。雨の日、混雑の時、それ丈徒に神経を浪費することは決して彼の為によくない・・・ 宮本百合子 「又、家」
出典:青空文庫