・・・嫁いで来た中條も貧乏な米沢の士族で、ここは大姑、舅姑、小姑二人とかかり人との揃った大家内であったし、舅はもうその頃中風で、世間なれない二十二の花嫁としては大姑、姑たちの、こまかくつけまわす視線だけでもなかなか辛い思いをしたらしい。その時分の・・・ 宮本百合子 「母」
・・・離婚しても、嫁、または子をもった嫁が、その家を去られたのであって、のこされた子を育てるには、姑だの小姑だのがあった。妻を去らせた男の生活の家事的な面はそれらの「家」の女たちによって結構まかなわれた。 家庭の単位を、夫と妻とその子供たちと・・・ 宮本百合子 「離婚について」
・・・ さて中條の家へ来てみたところが、そこには大姑、舅姑、小姑が四人、それにかかり人が二人いるという一家のありさまでした。それらの人々は、式の前にとりかわされる親類書というもので、母にも解っていたそうです。ところが愈々当時小石川原町の家へ来・・・ 宮本百合子 「わが母をおもう」
出典:青空文庫