・・・永久に忠勤を誓い奉ります。」「うん。しっかりやって呉れ。ゆうべの裁判のことはもう聞いた。それに今朝はこれから巡視に出るそうだな。」「はい。恐れ入ります。」「よろしい。どうかしっかりやって呉れ。」「かしこまりました。」 そ・・・ 宮沢賢治 「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」
・・・そうしたなら阿部一族は面目を施して、こぞって忠勤を励んだのであろう。しかるに上で一段下がった扱いをしたので、家中のものの阿部家侮蔑の念が公に認められた形になった。権兵衛兄弟は次第に傍輩にうとんぜられて、怏々として日を送った。 寛永十九年・・・ 森鴎外 「阿部一族」
・・・御臨終の砌、嫡子六丸殿御幼少なれば、大国の領主たらんこと覚束なく思召され、領地御返上なされたき由、上様へ申上げられ候処、泰勝院殿以来の忠勤を思召され、七歳の六丸殿へ本領安堵仰附けられ候。 某は当時退隠相願い、隈本を引払い、当地へ罷越候え・・・ 森鴎外 「興津弥五右衛門の遺書(初稿)」
出典:青空文庫