・・・ 飛んだことをいう奴だと思し召しますなら、私だけをお叱り下さいまして、何にも知りませんお米をおさげすみ下さいますなえ。 それにつけ彼につけましても時ならぬこの辺へ、旦那様のお立寄遊ばしたのを、私はお引合せと思いますが、飛んだ因縁だと・・・ 泉鏡花 「政談十二社」
・・・ところで、その画師さんは、その時、どこに居たと思し召します。……いろのことから、怪しからん、横頬を撲ったという細君の、袖のかげに、申しわけのない親御たちのお位牌から頭をかくして、尻も足もわなわなと震えていましたので、弱った方でございます。…・・・ 泉鏡花 「眉かくしの霊」
・・・「おとッつさんの思し召しはありがたく思いますが、一度わたしは懲りていますから、今度こそわが身の一大事と思います。どうぞ三日の間考えさしてください。承知するともしないともこの三日の間にわたしの料簡を定めますから」 父は今にも怒号せんば・・・ 伊藤左千夫 「春の潮」
出典:青空文庫