・・・ 菊池寛の感想を集めた「文芸春秋」の中に、「現代の作家は何人でも人道主義を持っている。同時に何人でもリアリストたらざる作家はない。」と云う意味を述べた一節がある。現代の作家は彼の云う通り大抵この傾向があるのに相違ない。しかし現代の作家の・・・ 芥川竜之介 「「菊池寛全集」の序」
・・・ 或夜の感想 眠りは死よりも愉快である。少くとも容易には違いあるまい。 芥川竜之介 「侏儒の言葉」
・・・趣旨はどんな事だったか、さらに記憶に残っていないが、恐らくは議論と云うよりも、先生の生活を中心とした感想めいたものだったと思う。と云うのは先生が、まるで羽根を抜かれた鳥のように、絶えず両手を上げ下げしながら、慌しい調子で饒舌った中に、「・・・ 芥川竜之介 「毛利先生」
・・・という小さな感想をかけといって来た時、私は何んの気もなく、「自分の幸福は母が始めから一人で今も生きている事だ」と書いてのけた。そして私の万年筆がそれを書き終えるか終えないに、私はすぐお前たちの事を思った。私の心は悪事でも働いたように痛かった・・・ 有島武郎 「小さき者へ」
・・・に投じた小さな感想についてである。兄は読まなかったことと思うが「宣言一つ」というものを投書した。ところがこの論理の不徹底な、矛盾に満ちた、そして椏者の言葉のように、言うべきものを言い残したり、言うべからざるものを言い加えたりした一文が、存外・・・ 有島武郎 「片信」
・・・その人の感情、感想から生れたものが、その人の文章であるかぎり、人格を現わすに不思議がないのでありましょう。故に、文章を読むことは、即ち、その人間に接することです。文品の高い、低いは、即ち、人品の高い、低いに他ありません。 作為なく、詐り・・・ 小川未明 「読むうちに思ったこと」
・・・だから、批評家が一朝机上の感想で、之を破壊することは不可能であるし、また無理だと思う。 茲では、其の事について云うのでない。要は、理想主義によらず、自然主義によらず、享楽主義によらず、主義と其の主張を問うのでなく、芸術品として出来上った・・・ 小川未明 「若き姿の文芸」
・・・自分の恋人や、夫についての感想をひとに求める女ほど、私にとってきらいなものはまたと無いのである。露骨にいやな顔をしてみせた。 女はすかされたように、立ち止まって暫らく空を見ていたが、やがてまた歩きだした。「貴方のような鋭い方は、あの・・・ 織田作之助 「秋深き」
・・・という感想を書いたが、しかし、その時私の突いた端の歩は、手のない時に突く端の歩に過ぎず、日本の伝統的小説の権威を前にして、私は施すべき手がなかったのである。少しはアンチテエゼを含んでいたが、近代小説の可能性を拡大するための端の歩ではなかった・・・ 織田作之助 「可能性の文学」
・・・「まず、満州へ行く感想といった題で一文いただけませんか」「誰が満州へ行くんだい?」「あなたが――。今日のうちの消息欄に出てましたよ」「どれどれ……」 と、記者の出した新聞を見て、「――なるほど、出てるね。エヘヘ……。・・・ 織田作之助 「四月馬鹿」
出典:青空文庫