・・・山奥の温泉に来り、なかば自炊、粗末の暮しはじめて、文字どおり着た切り雀、難症の病い必ずなおしてからでなければ必ず下山せず、人類最高の苦しみくぐり抜けて、わがまことの創生記、きっと書いてあげます、芥川賞授賞者とあれば、かまえて平俗の先生づら、・・・ 太宰治 「創生記」
・・・また器械の廻転軸の捻れを直接光学的に読み取るトーションメーターの考案も最も巧妙なものとして帝国学士院から授賞されたものである。また鉄筋コンクリートで船を造る場合に主応力の方向に鉄筋を入れるという最も合理的な施工法に関する特許を得ている。地震・・・ 寺田寅彦 「工学博士末広恭二君」
・・・湯川夫人の日本振袖の姿も、ノーベル賞授賞の式場に異国情緒を添えた。 それぞれの国の民族が婦人や子供、としより連まで固有の服装に身をかざって、その土地伝統の祭りを祝うような日の光景は、はた目にもおもしろく愉しいものだ。けれども、その美・・・ 宮本百合子 「この三つのことば」
・・・ ところが、この金襴の帆を順風に孕ませた宝船、文芸懇話会というものの文学に対する性質の矛盾は、この一九三五年七月、文芸懇話会賞が与えられた直後、授賞者決定に当って審査員の投票では島木健作氏が選に入っていたにもかかわらず、公表されない特別・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・の結成 噂のとおり、文芸懇話会が、最後に川端康成氏と尾崎士郎氏とに授賞して、十六日解散した。懇話会の主宰者・元警保局長松本学氏談として、帝国芸術院が出来上って、政府もわれわれの考えるような文化への態度を明らかにして来たから、芸術院に・・・ 宮本百合子 「近頃の話題」
出典:青空文庫