・・・それは同一地域の三角測量や精密水準測量を数年を隔てて繰り返し、その前後の結果を比較することによってわれらの生命を託する地殻の変動を詳しく探究することである。近着のアメリカ地理学会の雑誌の評論欄にわが国の地球物理学者の仕事を紹介してあるその冒・・・ 寺田寅彦 「地図をながめて」
・・・国のために、道のために、主義のために、真理の探究のために心を潜めるものは、今日でも「諸縁を放下すべき」であり、瑣々たる義理や人情は問題にしないのである。それが善い悪いは別として、そうしなければ大願望が成就しないことだけはたしかである。そうい・・・ 寺田寅彦 「徒然草の鑑賞」
・・・全く予測し難い地震台風に鞭打たれつづけている日本人はそれら現象の原因を探究するよりも、それらの災害を軽減し回避する具体的方策の研究にその知恵を傾けたもののように思われる。おそらく日本の自然は西洋流の分析的科学の生まれるためにはあまりに多彩で・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・ しかし、川の流れをさかのぼって深い谷間の岩の割れ目に源泉を発見した場合にいわゆる源泉の探究はそれで終了したとしても、われわれはその泉の水が決して突然そこで無から創造されたものではなくて、さらに深く地下の闇の中にその出所を追究することが・・・ 寺田寅彦 「俳句の精神」
・・・の一事だけでも新聞というものが現代の人心に与える影響はなかなか軽少なものではない。ほかの事はすべてさしおいても、「おそくとも確実に」というあらゆる「真」の探究者に最も必要な心持ちをすべての人からだんだんに消散させようとするような傾向のあるの・・・ 寺田寅彦 「一つの思考実験」
・・・ 上記のごとき現象が純粋な自然探究者にとって決して興味がなくはないのであっても、それが現在の学問の既成体系の網に引っかからない限りは、それが一般学者から閑却されるのもまた自然の成りゆきであったと思われる。ところが、最近に至って物理学の理・・・ 寺田寅彦 「物理学圏外の物理的現象」
・・・なおよく探究すると、公に言いにくい夫の疾がいつのまにか妻に感染したのだということまでわかった。父母の懸念が道徳上の着色を帯びて、好悪の意味で、娘の夫に反射するようになったのはこの時からである。彼らは気の毒な長女を見るにつけて、これから嫁にや・・・ 夏目漱石 「手紙」
・・・雷についての世界の探究にふれて語られていて、平明な用語は私たちに親しみぶかくこの本に近づけさせる。 第六話。山、氷河、および地殻の歴史を語られるにつれて、私たちの心によみがえるのはチンダルの「アルプスの旅より」「アルプスの氷河」などであ・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・ その間のいきさつを、人間生活の問題、両性の生きかたへの探究という云いまわしをとりつつ、現実には、ごく実際的な女房と家のもちかたというありきたりの内容を、真の精神の努力はなしに辿っている作品である。 作品のそういう本質からいうと、こ・・・ 宮本百合子 「「結婚の生態」」
・・・一方において、芸術と自然科学とを幾世代にわたって花咲かせてきた人間が、社会認識の成熟する諸条件がそなわりはじめた十八世紀末から、社会を学問的探究の対象とし始めた。資本主義社会が西欧で確立した十九世紀に、その基盤としての生産関係を究明して、そ・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
出典:青空文庫