・・・な、そうしておまえは新たに戸部の弟として新生面を開いてくれ。俺たちはそれを待っているから。じゃさよなら。一同かわるがわる握手する。花田 ともちゃん、おまえは俺たちの力だった、慰めだった、お母さんだった、かわいい娘だった。お・・・ 有島武郎 「ドモ又の死」
・・・もし長くその椅子に坐していたら必ず新生面を拓く種々の胸算があったろうと思う。正倉院の門戸を解放して民間篤志家の拝観を許されるようになったのもまた鴎外の尽力であった。この貴重な秘庫を民間奇特者に解放した一事だけでも鴎外のような学術的芸術的理解・・・ 内田魯庵 「鴎外博士の追憶」
・・・そういう場合に、突然にどこからか現われて来て新生面を打開するような対象が、往々それまではほとんど物理学の圏外か、少なくも辺鄙な片すみにあって存在を忘れられていたような場合であることもあえて珍しくはないのである。たとえば昔ある僧侶の学者が顕微・・・ 寺田寅彦 「物理学圏外の物理的現象」
・・・その他の映画が、たとえば恋愛を扱うにしろ、社会の非合理から生じた悲劇を悲劇のまま描いたものか、さもなければナンセンス、ユーモアに韜晦しているもの足りなさを、今日のソヴェト映画は、どのような内容と技術の新生面を開いているだろうか。小説が通俗化・・・ 宮本百合子 「映画の恋愛」
・・・そこに民主的文学の一つの新生面があり得るのである。〔一九四六年一月〕 宮本百合子 「生活においての統一」
・・・ての究明と呼応して取りあげられたのであるが、私たちの注意をひく点は、ブルジョア文学におけるこれらの諸課題=リアリズムの問題も、外国の古典作品の研究、明治文学の再吟味などすべてが、文学創作にとって実際上新生面を打開する積極的な役割ははたし得ず・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・進歩的な若い文学者などが、新しい生活への翹望とその実現の一端として、自分たちの恋愛を主張し、封建的な男女の色恋の観念を破って、人間的な立場と文化の新生面の展開の立場で、男女の人格的結合からの恋愛と結婚とをいったのであった。 ヨーロッパで・・・ 宮本百合子 「若き世代への恋愛論」
・・・たといそれが、世界的潮流に乗っている洋画家の努力から見て、時代錯誤の印象を与えずにはいない程度のものであるにしても、とにかく現代人の要求を充たすに足りる新生面の開拓の努力は喜ぶべきことである。 しかしこの十年来の革新の努力がどういう結果・・・ 和辻哲郎 「院展日本画所感」
出典:青空文庫