・・・ご自身で返事書きたき由仰せられ候まま御枕もとへ筆墨の用意いたし候ところ永々のご病気ゆえ気のみはあせりたまえどもお手が利き候わず情けなき事よと御嘆きありせめては代筆せよと仰せられ候間お言葉どおりを一々に書き取り申し候 必ず必ず未練のこ・・・ 国木田独歩 「遺言」
・・・そこでキッコはその鉛筆を出して先生の黒板に書いた問題をごそごその藁紙の運算帳に書き取りました。48×62= 「みなさん一けた目のからさきにかけて。」と先生が云いました。「一けた目からだ。」とキッコが思ったときでした。不思議なことは鉛・・・ 宮沢賢治 「みじかい木ぺん」
・・・ 然し、お千代ちゃんを助けるつもりで、由子は自分の家で、一つ机でお千代ちゃんと一緒に勉強した。書き取りを読んだ。母に頼んでお千代ちゃんの為に歴史や地理の問題を出して貰った。 * 試験の日、由子はお千代ちゃ・・・ 宮本百合子 「毛の指環」
・・・私はそれに赤や紺や紫や、買い集められただけの色インクで、びっしりと書取りをして行った。大判の頁、一枚ときめ、椽側で日向ぼっこをしながらちょうど時候にすればいま時分、とつとつと書きつめるのである。 一枚、一枚を使うインクの色をちがえ、バラ・・・ 宮本百合子 「入学試験前後」
出典:青空文庫