・・・これらはサンスクリトとしてはきわめて明白に、それぞれ全く異なる根幹から生じたものであるのに、音のほうではどこか共通なものがあり、同時に意味のほうにも共通なものがあるから全く不思議な事実である。 英語の brave や bravo も「べ・・・ 寺田寅彦 「言葉の不思議」
・・・しかし、ヘブライ語の相撲という言葉の根幹を成す「アバク」という語は本来「塵埃」の意味があるからやはり地べたにころがしっこをするのであったかもしれない。そうして相撲の結果として足をくじいてびっこを引くこともあったらしい。それから、これは全く偶・・・ 寺田寅彦 「相撲」
・・・ 現代科学の花や実の美しさを賛美するわれわれは、往々にしてその根幹を忘却しがちである。ルクレチウスは実にわれわれにこの科学系統の根幹を思い出させる。そうする事によってのみわれわれは科学の幹に新しい枝を発見する機会を得るのであろう。 ・・・ 寺田寅彦 「ルクレチウスと科学」
・・・生命の否定・人格無視・人種間の偏見を根幹とした軍事権力の支配とその教育のもとで、どうして若い幾千・幾万のこころが、個々の人間の尊厳や自我と社会現実との関係をつかむことが出来よう。 そういう意味で、一九四五年以後日本の若い精神をとらえた自・・・ 宮本百合子 「生きつつある自意識」
・・・今日から明日への文学は、人生の根幹へ手を入れて、それをつかみ出して見直すだけの、社会的理解力を必要として来ている。婦人の文学的創造の可能がたっぷりつよくなるためにも、必要なのはそのことであると思う。〔一九四七年二月〕・・・ 宮本百合子 「婦人の生活と文学」
・・・芸術家の日常生活、創作の内奥に作用する現実としての社会的相剋の問題こそ、現代の芸術問題の根幹をなしているものであるが長谷川氏は前一文の末で「社会的意欲」と支配的意欲との間に、今は世界的な範囲で立ち現れて来ている相異さえ明らかにしていられない・・・ 宮本百合子 「矛盾の一形態としての諸文化組織」
・・・山本有三氏は、この根幹をなす生涯のテーマから出立して、更にその人間としてなすべきことの内容と経過とその帰結とを小工場主、小学校、中学校、大学等の教師、下級中級サラリーマン、勤労婦人の日常葛藤の裡に究求し描き出そうとする。戯曲において、題材は・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
出典:青空文庫