・・・ 工場の昨今では、早出、残業、夜業は普通であるし、設備の不十分な下請け工場の簇出と不熟練工の圧倒的多数という条件は、工場内での災害をこれまでの倍にした。警視庁がこれに対して、十二時間を限度とする警告を発したのは遠いことではなかった。母性・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・タイピストたちは、今年はことに激しかった猛暑の中で大汗になり、袂を肩へかつぎあげて、残業で働いている。そういう話をきいた。今日、その事情がどうかわって来ているかはしらないけれども、この小さい一つの例は、忘れられない強さで、女がその活動の場面・・・ 宮本百合子 「祭日ならざる日々」
・・・文選十六人は彼を入れすぐ立ち、六時の夕飯三十分の休みに、文選十六人はベン当箱をもって一つところに集り、きめた以上の仕事はしないこと、きめた以上は監督のところへ突かえしにゆき残業させぬようにしようと決議して就業。「ガンばれ」「うら切るとゲンコ・・・ 宮本百合子 「大衆闘争についてのノート」
・・・ 現に十五六日前にも吾嬬の方のゴム工場で、戦争用毒ガスマスクなどを作る仕事が忙しいため強制残業がつづきすぎ、労働者から頻々と肺病人を出した結果、争議になりかかった。また月島の方のある工場ではやはり軍需品を嫌でも応でも温順しく作らせるべく・・・ 宮本百合子 「メーデーに備えろ」
・・・何故なら景気がよい、就業率は上向きだと云っても、工場に働いている人々の賃銀の上昇には残業割増、歩増などの時間外労働強化がついているのであるし、小売物価の急激な騰貴は結局、いくらかましな工場労働者の賃金をも今日では凌いでしまっている。実質賃銀・・・ 宮本百合子 「「ラジオ黄金時代」の底潮」
出典:青空文庫