・・・自分の案内されたのはおそらく昔なら殿上人の席かもしれない。そう云えばいちばん前列の椅子はことごとく西洋人が占めていて、その中の一人の婦人の大きな帽子が、私の席から見ると舞台の三分の一くらいは蔽うのであった。これは世界中でいつも問題になる事で・・・ 寺田寅彦 「雑記(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・が「殿上人」となることとなった。「かかる官府の豹変は平安盛時への復帰とも解釈されるし、また政府の思想的一角が今日、俄かに欧化した」とも云い得るかのようであるが、実際には帝国芸術院が出来ると一緒に忽ち養老院、廃兵院という下馬評が常識のために根・・・ 宮本百合子 「矛盾の一形態としての諸文化組織」
・・・軽くあしらっていると、それがかねがね清少納言の讚嘆をあつめていて地位も名声も高い美男の殿上人であったので清少納言は少からずうろたえる。その殿上人は、女の人は寝起きの顔がことの外美しいと聞いていたから見に来たのですよ。帝がいらしたうちからここ・・・ 宮本百合子 「山の彼方は」
出典:青空文庫