・・・ こゝに、自由の生む、形態の面白さがあり、押えることのできない強さがあり、爆破があり、また喜びがあるのである。自然の条件に従って、発生し、醗酵するものゝみが、最も創意に富んだ形を未来に決定するのである。それ故に、機械主義的な構成に、また・・・ 小川未明 「常に自然は語る」
・・・ 線路には、爆破装置が施されているのではなかった。破壊されているのでもなかった。たゞ、パルチザンは、枕木の下へ油のついた火種を入れておくだけだった。ところが、枕木は炭焼竈の生木のように、雪の中で点火されぷす/\燻りながら炭になってしまう・・・ 黒島伝治 「氷河」
・・・きょう、日曜の雨、たいくつでたまらぬが、お金はなし、君のとこへも行けず、天候の不満を君に向けて爆破、どうだ、すこしは、ぎょっとしたか。このぶんでは、僕も小説家になれそうだね。はじめの感想文は、あれは、支那のブルジョア雑誌から盗んだものだが、・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・重兵衛さんは自分の心にファンタジーの翼を授け、自分の現実世界の可能性の牢獄を爆破してくれた人であった。 重兵衛さんの次男で自分よりは一つ二つ年上の亀さんからも実に色々のことを教わった。彼はたしかに一種の天才であったらしい。何をさせても器・・・ 寺田寅彦 「重兵衛さんの一家」
・・・クラカトア火山の爆破の時に飛ばされた塵は、世界中の各所に異常な夕陽の色を現わし、あるいは深夜の空に泛ぶ銀白色の雲を生じ、あるいはビショップ環と称する光環を太陽の周囲に生じたりした。近頃の研究によると火山の微塵は、明らかに広区域にわたる太陽の・・・ 寺田寅彦 「塵埃と光」
一 震災後復興の第一歩として行なわれた浅草凌雲閣の爆破を見物に行った。工兵が数人かかって塔のねもとにコツコツ穴をうがっていた。その穴に爆薬を仕掛けて一度に倒壊させるのであったが、倒れる方向を定めるために・・・ 寺田寅彦 「LIBER STUDIORUM」
・・・ 鶏冠山砲台を、土台ぐるみ、むくむくっとでんぐりがえす処の、爆破力を持ったダイナマイトの威力だから、大きくもあろうか? 主として、冬は川が涸れる。川の水が涸れないと、川の中の発電所の仕事はひどくやり難い。いや、殆んど出来ない。一冬で・・・ 葉山嘉樹 「坑夫の子」
・・・ キュリー夫人は冷静に、パリの置かれている当時の事情を観察して、たといパリが包囲され、爆破されても、新しくできたばかりの研究所は自分の力で敵の手から守らなければならないと考えたからであった。研究所にある一グラムのラジウムを、人類と科学と・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人」
・・・ フランスと結托している反動的なポーランドがワルソーのソヴェト大使館爆破をやりかけたのは、どういう云いがかりをつけるためであったろうか。ソヴェト同盟の大衆は時に応じ、事情に従い、階級的な国際関係についての経験をかさねながら、それらと闘争しつ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・いくたびもの五ヵ年計画を成就し、ファシズムとの闘いに勝利し、あのように全ソヴェト人が熱中して建設したドニエプル・ストロイさえも、敵の手から守るためには、そこを造った労働者自身の手で爆破したが、今日はそれを再びその人々の手によって建設しおおせ・・・ 宮本百合子 「三つの愛のしるし」
出典:青空文庫