・・・一層奮闘する事が出来るようになるので、私は、奮闘さえすれば何となく生き甲斐があるような心持がするんだ。 明治三十六年の七月、日露戦争が始まると云うので私は日本に帰って、今の朝日新聞社に入社した。そして奉公として「其面影」や「平凡」なぞを・・・ 二葉亭四迷 「予が半生の懺悔」
・・・音楽とか、絵画とか、芝居とかいう芸術を通じて、人間の生活は高貴なものであって、美しく正しく生きようとするよろこびにこそ生き甲斐があるということを教えて行くようなものは不足しています。体も精神も成長の慾望に溢れている少女達は、お腹の空いている・・・ 宮本百合子 「美しく豊な生活へ」
・・・その人々の真情に痛みあふれている良人への愛慕や、その愛の故に、自分の毎日は内容があり生き甲斐もあるものとしていかなければならないと思って努力している若い心と肉体とは、未亡人というよび名をきいたときどんなに異様に感じ、気味わるく思うことだろう・・・ 宮本百合子 「世界の寡婦」
・・・力のある満ち満ちた生き甲斐のある生活を好いて居る千世子にとって自分の囲りをかこむ人が一人でも殖えると云う事が嬉しかったし又満足されない自分の友達と云うものに対しての気持を幾分かは此人によって満足されるだろうと云う深く知り合わない人に対しての・・・ 宮本百合子 「千世子(二)」
・・・ 仕事をしなくてはいけない、仕事をしない人間は生き甲斐のない人間だと云うこの言葉だけは知って居るけれ共、何故仕事をしなければならないか? と云う問題になるとはっきり分らないものだ。 この頃は天才がふえた。ことに雑誌なんかの上・・・ 宮本百合子 「芽生」
出典:青空文庫