・・・新しい、自覚した女性は、いまや、この社会の病弊がどこに在るかをよく知っている筈だ。それを革めない限りは、いつまでたっても自分等の望むような生活は得られないと考えている。これは独り女のみの問題でなく、男も、女も、一般の人間の問題だということに・・・ 小川未明 「婦人の過去と将来の予期」
・・・要するに厭世的なるかかる詭弁的精神の傾向は破壊的なるロマンチズムの主張から生じた一種の病弊である事は、彼自身もよく承知しているのである。承知していながら、決して改悛する必要がないと思うほど、この病弊を芸術的に崇拝しているのである。されば賤業・・・ 永井荷風 「妾宅」
・・・ 唖々子は弱冠の頃式亭三馬の作と斎藤緑雨の文とを愛読し、他日二家にも劣らざる諷刺家たらんことを期していた人で、他人の文を見てその病弊を指してきするには頗る妙を得ていた。一葉女史の『たけくらべ』には「ぞかし」という語が幾個あるかと数え出し・・・ 永井荷風 「十日の菊」
・・・現代の戦争が資本主義そのものの病弊であるとき、その原因が合理的にとりのぞかれないで、どうして本当の平和があり得ましょう。もうだれでも、これまでのままの資本主義の社会では人民の幸福がないことをさとっています。それでは苦しい経験をかさねている日・・・ 宮本百合子 「求め得られる幸福」
出典:青空文庫