・・・大正十二年関東大震災以前から既に地震学に興味をもっていたが、大震災の惨害を体験した動機から、地震に対する特殊の研究機関の必要を痛感し、時の総長古在由直氏に進言し、その後援の下に懸命の努力をもって奔走した結果、遂に東京帝国大学附属地震研究所の・・・ 寺田寅彦 「工学博士末広恭二君」
・・・かの可能性をひき出し、たとえ半歩たりとも具体的に前進しようとする階級の、いよいよ強靭にされる連帯性、積極性の大小さまざまの情熱的な現実の内容は、遙に歌人中河幹子氏の感情と芸術とを超えたものであることを痛感したのであった。 日本の現実は、・・・ 宮本百合子 「新しい一夫一婦」
・・・ わたしたちの民族独立への希望や、文化の自立への希望――つまり独立した社会人として当然に抱いている生活におけるすべての希望は、ファシズムとの闘いなしにはうちたてられないことを痛感しているわけですが、それにつけてもわたしたちは日常生活の中・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・それ等を、わが胸で痛感する者は、決して未だ多過ぎることは無いのである。 近頃、漸々一体の注意を呼び始めた、ロシアの大飢饉と云うことに対しても、真の意味で、友誼的であるべき諸邦の愛が、私は、余り鈍っていると思う。 確に或る国は率先して・・・ 宮本百合子 「アワァビット」
・・・彼等の俳優としてのそういう熱意が快く感じられると共に、中国の現実そのものの力が、今日国際的な関心の性質を次第に真面目な人間的なリアリスティックなものに変えつつあることを痛感したのである。 ただ残念なことにこの「大地」もアメリカ映画特有の・・・ 宮本百合子 「映画の語る現実」
・・・杏奴さんの文章をも読み、私はこれらの若い時代の人々が文章のスタイルに於て、父をうけついでいるのみならず、各自の生活の輪が、何かの意味で大きかった父という者の描きのこした輪廓の内にとどめられていることを痛感した。 漱石は、その作品の中で、・・・ 宮本百合子 「鴎外・漱石・藤村など」
・・・ミュンヘンで催された国際美術展をみて、ケーテはドイツの従来の絵画が現代生活をとり入れることと、新鮮な色彩感を導き入れるという点では、はるかに他国の画家よりおくれていることを痛感した。ケーテが若い美術家たちと「コムポニール倶楽部」をこしらえた・・・ 宮本百合子 「ケーテ・コルヴィッツの画業」
・・・うやすやすと実現しにくいことを決して知らなくはない今日の女性たちであるならば、母という生の道でへてゆく日々に、その伴侶である男性との間の理解、共感、協力がどんなに大きい影響をもってくるかということを、痛感しないではいられないであろうと思う。・・・ 宮本百合子 「結婚論の性格」
・・・言葉をかえて云えば、もう騙されて生きていきたくはないからこそ、自身の一票の処置について、判らなさを痛感しているのである。 明治以来つい最近まで七十年余に、日本の文化は極めて不健全な実体をもって来た。世界の多くの国々をみれば、人口の過半を・・・ 宮本百合子 「現実に立って」
・・・したがって、一層これ以前の時期から、野暮に正直に不遇な日本の民主精神と、平和への精神が追求される必要が痛感される。 宮本百合子 「「現代日本小説大系」刊行委員会への希望」
出典:青空文庫