・・・的言イアテルヨリハ、ワガ思念開陳ノ体系、筋ミチ立チテ在リ、アラワナル矛盾モナシ、一応ノ首肯ニ価スレバ、我事オワレリ、白扇サットヒライテ、スネノ蚊、追イ払ウ。「ナルホド、ソレモ一理窟。」日本、古来ノコノ日常語ガ、スベテヲ語リツクシテイル。首尾・・・ 太宰治 「創生記」
・・・ 富士を、白扇さかしまなど形容して、まるでお座敷芸にまるめてしまっているのが、不服なのである。富士は、熔岩の山である。あかつきの富士を見るがいい。こぶだらけの山肌が朝日を受けて、あかがね色に光っている。私は、かえって、そのような富士の姿・・・ 太宰治 「富士に就いて」
・・・こまかいたて縞のすきとおる着物にうすい羽織を着た浅吉は、白扇をパチリ、パチリ鳴らしながらあんまり物を云わず、笑いもせず、木菟のような眼の丸い頬ぺたのふくらんだ顔で坐っている。そのすこし斜うしろにぺたりと薄い膝で坐った根下り丸髷にひっかけ帯の・・・ 宮本百合子 「菊人形」
出典:青空文庫